世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


8月 27, 2013

WatsonはPower8の頭脳で何をする?

HPCwire Japan

Alex Woodie

IBMのWatsonが2011年に「Jeopardy!」(クイズ番組)のゲームで全ての候補を打ち破った際には世界中の人々を感動させた。それ以来、IBMは、とりわけ、財務分析、ヘルスケア、および顧客サービスにおける企画でPOWER7ベースの技術は大忙しだ。しかし今、IBMはPower8プロセッサの出荷準備を進めており、新しくより強力なWatsonが出現することを見ることができるかもしれない。

スタンフォード大学のHot Chips会議において、今週IBMは来るべきPower8プロセッサの詳細を発表した。12コア、4GHzのPower8チップは、同時に96スレッドを実行することが可能で、ゲームショーで競ったWatsonスーパーコンピュータで使用されていたIBM POWER7チップよりも2〜3倍以上強力であると予想されれている。

Power8のデータ移動の能力は、2012年に出荷した暫定的なPOWER7+を含む以前の設計より飛躍的に改善されている。Power8のチーフ・アーキテクト、ジェフ・スティヒーリによる月曜日のHot Chipsでのプレゼンテーションによると、新しいプロセッサは、L4キャッシュとプロセッサ間で毎秒230GBの持続的なメモリ帯域を持ち、新たにダイ上に統合されたPCI-Express 3.0コントローラによって毎秒48ギガバイトの総合最大I/O性能を持った非常に高速なチップである。

この統合されたPCI-Express 3.0コントローラにIBMが行ったクールなことの一つは、コヒーレント・アタッチド・プロセッサ・インタフェース(CAPI)と呼ばれる新たなトランスポート層を設計したことである。これはGPUやフィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)などのコ・プロセッサをPower8チップに直接接続し、メモリ内のデータを共有可能とする。Nvidia、GoogleおよびMellanoxは、今月初めにIBMが発表したOpenPowerコンソーシアムに参加し、このCAPIプトロコトを通じてPower8チップへGPUを組み入れることを期待している。

これらはJeopardy!で多くの心を掴んだ2,880コアのスーパーコンピュータであるWatsonには何の意味を持つのだろうか? 純粋にスレッド数と並列ワークロードを基準とすると、POWER7技術で毎秒500ギガバイト分の情報、一万冊の本相当を処理することができたWatsonにPower8プロセッサは有益で無くてはならない。

本当に興味をそそる部分は、NVIDIAのGPUとMellanoxのインターコネクトとを組み合わせた新しいPower8ベースのスーパーコンピュータが、Watsonで使われているDeepQA(質問応答)技術を含むHPCワークロードに何ができるかである。

IBMによると、DeepQAの組み合わせは、自然言語処理、機械学習、仮説生成、証拠収集、分析、およびスコアリングを含めて、様々なワークロード・コンポーネントに100以上の異なるテクニックを使用している。 ApacheのHadoopとUIMA(非構造化情報管理アーキテクチャ)フレームワークもまたWatsonのソフトウェアの中で役割を果たしている。

Watosonが最も苦戦する領域 — 文章の本当の意味を正しく決定するために文脈を評価する — は、人工知能と機械学習エキスパートでも解答に至っていない、取り分け困難な問題である。 おそらくは、Power8技術とOpenPowerコンソーシアムから開発されるものを組み合わせることにより、より良い答えを見つける一助となるだろう。

PC Worldの記事によると「Watsonは、我々にとって伝統的なワークロードではなかった」とIBMのスティヒーリがHot Chipsのプレゼンテーションで語った。 「我々は、チャンスをさらに見つけて行きたい。」