TOP500国別対抗 巻き返す中国、ペタフロップスマシンの保有数で世界一に
恒例によりTOP500の国別対抗をやってみようと思う。あまり意味はないが、その年の各国のスパコンに対する意気込みを感じることができる。今回はまたまた中国だ。TOP500の1位の座を取るだけではなく、TOP500を独占する勢いだ。

今回のTOP500では前回エントリ数を24も減少させた中国が巻き返しを図っている。前回の37エントリから実に109エントリに増やしたのだ。増加した分のほとんどをアメリカ(-34)、イギリス(-11)およびフランス(-9)から奪いとった形となった。増加した109システム中、新規システムが87システムある。その新規87システム中、Sugonが45エントリ、Lenovoが24エントリ、Inspurが15エントリを追加した。LenovoとInspurは今回初登場となっている。
国別エントリ数
国名 | 2015/11 | 2015/06 | 増減 |
---|---|---|---|
アメリカ | 199 | 233 | -34 |
中国 | 109 | 37 | +72 |
日本 | 37 | 40 | -3 |
ドイツ | 33 | 37 | -4 |
イギリス | 18 | 29 | -11 |
フランス | 18 | 27 | -9 |
インド | 11 | 11 | 0 |
韓国 | 10 | 9 | +1 |
ロシア | 7 | 8 | -1 |
ポーランド | 5 | 7 | -2 |
サウジアラビア | 6 | 7 | -1 |
オーストラリア | 5 | 6 | -1 |
ブラジル | 6 | 6 | 0 |
カナダ | 6 | 6 | 0 |
スイス | 6 | 6 | 0 |
また、ペタフロップスマシンでも中国の攻勢が続く。ペタフロップス・システムとして40エントリ増加して合計48システムとなり、アメリカの44システムを越えて保有数としては世界一となった。世界全体では前回の100システムから152システムに増加しているが、そのほとんどが中国のシステムである。今回、韓国から新たに2システムがペタフロップス・クラブに入った。韓国気象庁の2台のCrayシステムである。
ペタフロップスマシン
国名 | 今回 | 前回 | 増減 |
---|---|---|---|
中国 | 48 | 8 | +40 |
アメリカ | 44 | 38 | +6 |
日本 | 16 | 13 | +3 |
ドイツ | 11 | 11 | |
イギリス | 5 | 5 | |
フランス | 5 | 5 | |
サウジアラビア、イタリア、オーストラリア | 各3 | 各3 | 国名横の()内に増減を示す |
インド(+1)、スイス、ロシア、韓国(+2) | 各2 | 各2 | |
スウェーデン、スペイン、ポーランド、オランダ、フィンランド、チェコ | 各1 | 各1 | |
合計 | 152 | 100 | +52 |
今回のリストでは中国が大躍進することとなっているが、新規に加わったシステムの区分けを見てみる。一番多いのはインターネット企業の26システムで、内10システムがペタフロップスマシンだ。次に多いのはインターネット・サービス企業で16システム。注目すべきなのはオンライン販売大手のアリババだ。今回5システムがエントリしており、すべてがペタフロップスマシンだ。このように新たに加わった87システムのほとんどがインターネット関連企業である。日本で言うなら、楽天、Yahooなどの通販企業やIDCを展開する企業などがTOP500にエントリしたことになる。ベンチマークに多くの時間を費やすLINPACKを業務を止めて実行して計測するのは、国家的な指導がなければ難しいだろう。他の国では真似ができないことだ。
中国の新規システム業界別エントリ数
セグメント | 新規エントリ数 | 内、ペタフロップスマシン |
---|---|---|
Internet Company | 26 | 10 |
Internet Service | 16 | 7 |
Government | 8 | 1 |
Alibaba Group | 5 | 5 |
China Mobile | 5 | 3 |
Service Provider | 5 | 5 |
Electricity Company | 4 | 2 |
Telecom | 3 | 3 |
中国国営石油 | 2 | 0 |
その他 | 13 | 5 |
コア数を見てみると、中国がコア数で倍増させており、中国に押し出される形でエントリ数を減らした国はのきなみマイナスとなっている。その中でも増加している国は日本、韓国、インドだ。中国と合わせてアジア圏が全体的にコア数を押し上げた形となってている。その中でも今回顕著なのはアクセラレータの伸びが鈍ったことだ。プロセッサコア数が16%増加したが、アクセラレータコア数は3.2%しか増加していない。やはり誰もがIntelのKnights Landingを待っているために買い控えしているのだろうか?
コア数
()内は前回の数値
国名 | 全体コア数 | 伸び率 | アクセラレータコア数 | 伸び率 |
---|---|---|---|---|
アメリカ | 10733270 (10860955) |
-1.2% | 1390044 (1358525) |
+2.3% |
中国 | 9046772 (4630616) |
+95.4% | 3204824 (3119148) |
+2.7% |
日本 | 3487404 (3258150) |
+7.0% | 1797468 (1669106) |
+7.7% |
ドイツ | 1487324 (1496948) |
-0.6% | 68332 (64072) |
+6.6% |
イギリス | 724184 (937368) |
-22.7% | 3328 (12400) |
-73.2% |
フランス | 766540 (877212) |
-12.6% | 3640 (3640) |
±0% |
オーストラリア | 427067 (436507) |
-2.2% | 175851 (175851) |
±0% |
サウジアラビア | 388240 (453776) |
-14.4% | 33600 (33600) |
±0% |
イタリア | 310072 (310072) |
±0% | 86408 (86408) |
±0% |
韓国 | 283568 (219012) |
+29.5% | 0< (0) |
±0% |
インド | 236692 (226652) |
+4.4% | 38014 (42626) |
-10.8% |
ロシア | 208604 (226302) |
-7.8% | 103124 (116690) |
-11.6% |
全体 | 29280087 (25231890) |
+16.0% | 7096303 (6876420) |
+3.2% |
次にシステム性能を見てみる。やはり中国はエントリ数を増やすためにかなり無理したようだ。エントリ数が増えた分ピーク性能の合計は2.2倍になったが、実行性能は1.8倍程度にしかなっていない。元々低い平均実行効率も前回の57.5%からさらに低下し46.7%まで落ちている。これは実行効率などあまり考えずにLINPACKを実行して兎に角エントリ数を増やすためだけに実行したことが伺える。エントリ数を大幅に減少させたアメリカはどっこい、合計性能でプラスに転じている。イギリスにとってはエントリ数が減ったので痛かったが、効率の悪いシステムが消えた分、実行効率が若干上がっている。
システム性能
()内は前回の数値
国名 | ピーク性能GFLOPS | 伸び率 | 実行性能GFLOPS | 伸び率 | 平均実行効率 |
---|---|---|---|---|---|
アメリカ | 246058722 (230360081) |
+6.8% | 172582178 (161267425) |
+7.0% | 70.1% (70.0%) |
中国 | 189895013 (86277350) |
+120.1% | 88711111 (49567686) |
+79.0% | 46.7% (57.5%) |
日本 | 49400668 (43937977) |
+12.4% | 38438914 (34039201) |
+12.9% | 77.8% (77.5%) |
ドイツ | 38060201 (34164253) |
+11.4% | 29870245 (26697524) |
+11.9% | 78.5% (78.1%) |
フランス | 14699173 (16571710) |
-11.3% | 12252180 (13872718) |
-11.7% | 83.4% (83.7%) |
イギリス | 14230096 (18443570) |
-22.8% | 11601324 (14532111) |
-20.2% | 81.5% (78.8%) |
サウジアラビア | 13026704 (13249526) |
-1.7% | 9788964 (9979864) |
-1.9% | 75.1% (75.3%) |
スイス | 11043119 (10869832) |
+1.6% | 8724951 (8631418) |
+1.1% | 79.0% (79.4%) |
全体 | 641117152 (513123202) |
+24.9% | 420314323 (362652490) |
+11.6% | 65.6% (70.7%) |
最後に実行効率の高いシステムを紹介する。SGIが多いのが目立っている。
実行効率トップ5
順位 | 国名 | 機関名 | システム | メーカー | TOP500順位 | 実行効率 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アメリカ | Texas A&M大学 | Ada | IBM | 296 | 99.8% |
2 | ブラジル | SENAI CIMATEC | CIMATEC Yemoja | SGI | 241 | 98.2% |
3 | イギリス | AWE | Spruce A | SGI | 87 | 96.1% |
4 | イギリス | AWE | Spruce B | SGI | 107 | 96.1% |
5 | インド | インド工科大学 | Cluster | HP | 285 | 95.8% |
以上、今回のTOP500国別対抗は中国の飛躍的な増加が特徴的であった。次回2016年6月がまた楽しみだ。