世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々



  1. Facebook

  2. Twitter


4月 13, 2015

CAEシリーズ:第6回 CAEにおける流体解析関連ソフトウェア

岩田進吉(有限会社イワタシステムサポート代表取締役/中部CAE懇話会幹事)

今回は流体解析関連のソフトウェアについてお話をさせて頂きます。流体解析ソフトウェアも構造解析と同じように様々なソフトウェアがあり、かつ様々な領域をサポートしているので説明が難しいですが、ここでは私が知っている主なソフトウェアに関して説明をさせて頂きます。ここで説明する流体解析ソフトウェアは専任者用のソフトウェアであり、設計者が使う流体解析ソフトウェアには触れておりません。

CAEEYECATCH

流体解析ソフトウェアの大まかな分類

流体解析ソフトウェアの種類は大きく分けて下記の図の通りです。
構造解析ソフトウエアの様に明確に分類できませんが、勝手に以下の様に分類をさせて頂きました。 分類としては多くのユーザで使われている汎用の流体解析ソフトウェアと特殊な業界、あるいは特殊な分野、特殊な利用法で使われていると思われる分類いにしました。

cae6-image

流体解析ソフトウェアの歴史

流体解析ソフトウェアの源流はイギリスにあり、最初の発端が「リチャードソンの夢」で有名なCambridge大学にいたリチャードソン博士が1922年刊行の「Weather Prediction by Numerical Process」です。この本には流体運動を時間的、空間的に離散化して解くことを提唱した内容でしたが、この当時はコンピュータもなくて実現しませんでしたが、その後のコンピュータや流体解析ソフトウェアには多大な影響を与えたようです。

1960年代から80年代にかけて米国やイギリスで流体解析が盛んに研究され、その中で製品化をしたのがロンドンのインペリアルカレッジから出たPHONICSです。このソフトウェアは最初の流体解析の商用ソフトウェアです。 その後、STAR-CD、FLUENT等が80年代の初めにかけて出てきております。その後、80年代、90年代を通して上記以外のソフトウェアが沢山出てきており、日本ではソフトウェアクレイドル社がSTREAM、SCRYUを出し汎用ソフトウェアの一角を占めて頑張っています。

その他の特徴的なソフトウェアとしては自動車の外部流れに強いPowerFlowがあります。このソフトウェアは格子ボルツマン法を拡張した手法により解析しており、自動車の外部流れには特化しているとお聞きしております。私の個人的な経験では90年代の後半にExa社のマネージャーの方を中部地区の自動車関連の企業に連れて行きご案内した記憶があります。

流体解析ソフトウェアの主なものは有限体積法が多いですが、その中で有限要素法のソフトウェアで紹介したいものとしてAcuSolveがあります。開発は米国西海岸にあるACUSIM社が開発し、現在はAltair社の一部になっており、HyperWorksのパッケージの一部として販売されております。AcuSolveの良い点はメッシュがロバストで一般の有限体積法の様に境界層のメッシュ生成に苦労せずに、テトラやヘキサメッシュで容易にメッシュ作成ができることです。 また並列化も容易で柔軟性のある流体解析ソフトウェアではないかと思います。

個々の流体解析ソフトウェア

FluentやStar-CD、Scryu/Tetraに代表される汎用流体解析ソフトウェアは
   流体、乱流、熱伝達
を主な機能として持っており、それ以外にも各種機能があります。
詳しくは各社のホームページ等でご確認ください。
以下の各ソフトウェアについてはホームページと日本の販売会社のホームページにあるポイント列挙させていただきます。 詳しくは日本の販売点等に確認して下さい。

 

Star-CD 株式会社CD-adapco
流体解析ソフトウェアの源流の一つ、インペリアルカレッジのGosman博士が開発、Gosman博士は有限体積法を非構造格子に適用して実用性を高めた との事です。Gosman博士は燃焼解析に強かったようです。そのせいでしょうか、Star-CDは燃焼に強いソフトウェアだとお聞きしております。参考 URLはhttp://www.hpctoday.com/best-practices/icons-of-cfd-david-gosman/です。
 grayline-470x10
Fluent アンシス・ジャパン株式会社
流体解析ソフトウェアの源流の一つ、イギリスのシェフィールド大学のBoysan博士によるCFDコードであるTEMPESTをもとに商品化した有限体積法のソフトウェア、1990年代初頭には非構造格子に対応。
  grayline-470x10
SCRYU/Tetra 株式会社ソフトウェアクレイドル
日本発のソフトウェアで大阪を拠点として1984年に創業、当初は有限体積法のソフトウェアで構造格子系のソフトウェアであるSTREAMを販売・サポートし、1987年より非構造格子系のSCRYU/Tetraを販売サポートしている。最近は海外にも進出をしているようです。
  grayline-470x10
AcuSolve アルテアエンジニアリング株式会社
スタンフォード大学のThomas J.R. Hughes博士に源流をもち、80年代後半から90年代初頭にかけて開発されたGalerkin/Least-Squares(GLS)有限要素法を ベースにした有限要素法の流体解析ソフトウェアです。開発はFarzin Shakibさんで日本にも講演等で何度も来日しております。
日本でも古くから使われておりましたが、広く紹介され始めたのはJSOLが2007年に日本の販売代理店になってからです。その後、AcuSolve社が Altair社に買収されてからはHyperWorksライセンスで使えるようになってからはライセンス的に使いやすいソフトウェアになりました。特徴はAltair社のホームページにも書かれておりますがロバスト性と高速性にあるかと思います。
  grayline-470x10
PHOENICS CHAM-Japan (チャム・ジャパン)
流体解析ソフトウェアの源流で世界で最初に商用化されたCFDコードです。インペリアルカレッジのSpalding博士が開発、有限体積法の構造格子ソフトウェアです。
  grayline-470x10
PowerFlow エクサ・ジャパン株式会社
特徴は歴史でも紹介いたしましたが格子ボルツマン法を拡張した手法で独自のDigital Physicsテクノロジーが基礎になっている事とうたわれております。自動車業界の外部流れに強く高く評価されているようです。
  grayline-470x10
CONVERGE Convergent Science社
日本ではIDAJが販売しているソフトウェアで、開発元は米国Convergent Science社です。エンジンの燃焼に特化したソフトウェアです。最近、お客様のところ使われているのをお聞きするようになりました。これも今まで STAR-CDを販売していたIDAJが販売する事によりお客様のニーズを知っている事が強いのかと思われます。
  grayline-470x10
AVL/Fire AVL社
オーストリアに本社がある会社で自動車のエンジンに関連したソフトウェアの開発、実験、コンサルティング等をしている会社とお聞きしております。日本では自動車メーカーの研究部門がある地域にはオフィスがあるようです。
  grayline-470x10
FLACS GexCon AS社
ノルウェーにある会社で水素や燃性ガスの燃焼爆発危険性解析のためのソフトウェアです。流体解析ソフトウェアとしては異色のソフトウェアという事であげてみました。日本では株式会社爆発研究所が販売しております。
  grayline-470x10
AMI Series Stark Aerospace, Inc.
Stark/AMIはヘリコプター、船、高速鉄道車両、潜水艦、レーシングカー等の空力解析で使われている解析ソフトウェアです。日本では株式会社テラバイトが扱っております。
  grayline-470x10

以上が主な汎用流体解析ソフトウェアと特定分野に強いソフトウェア群です。これ以外にもCFXやCFDesign等の各種のソフトウェアがあります。
ソフトウェアの選択に関しては自社の業務に適した解析ができるように十分検討をされてから採用する事をお勧めいたします。

FreeのOpenCAEと日本発のソフトウェアについては別の機会にご説明をさせて頂きます。

次回は「粒子法関連ソフトウェア」という内容で書かせて頂ければと考えております。

参考情報:
1. 自動車技術会シンポジウムにおける市販CFDコードの評価 -“CFDソフト・ハードの性能比較”を振り返って- 池田 和外 様
2. コンピュータ・シミュレーションの課題と動向 -原理から現場へ- 小林 敏雄 様
3. 各社のソフトウェア紹介ページ