世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


2月 4, 2014

アフリカ、ジェノミクスの進歩

HPCwire Japan

Tiffany Trader

アフリカのStellenbosch大学( SU )の科学者達が、MegaMindと愛称で呼ばれた次世代シーケンサー5500xlにより、アフリカ大陸で初めてヒトゲノムの配列決定を完了させた。この成果は、南アフリカのための科学アカデミーによって四半期ごとに出版されている人気の科学誌Questの最近号に特集記事として掲載された。

2011年に、Stellenbosch大学( SU )は、国立研究財団からの助成金でMegaMindを購入した。シーケンサーは、大学の中央分析施設( CAF )の一部であるDNAシーケンシング部門に設置された。今年の初めに、科学者たちは人間のゲノムの解析を行い、アフリカ大陸で初めてのヒトゲノムの配列を決定した。

世界はDNA二重螺旋の発見60周年を迎えたが、人間のような大規模なゲノムのシーケンシングには、「高度に洗練された機器、専門的な技術知識それにスーパーコンピューティングパワーが必要とされる。」と、ステレンボッシュ大学のサイエンスライターWiida Fourie-Bassonは指摘している。これまでアフリカ大陸にはこの挑戦に必要なすべてのリソースが揃っていなかった。

ヒトゲノムプロジェクトの下での最初の完全なヒトゲノムの配列決定は、 30億ドルのコストをかけ13年にわたり行われた。 千人以上の科学者達のこの画期的なプロジェクトへの取り組みは、2001年にNatureとScience誌にゲノム配列のドラフトが初めて論文として別々掲載され、その頂点に達した。2003年4月にはプロジェクトの完了が宣言され、世界はゲノム時代への突入を歓迎した。

2005年には、次世代シーケンシングが新たな地平を切り開いた。全ゲノムの配列を決定するのに、数年ではなく数週間で可能となった。さらにそれに必要なコストは1億ドルから10万ドル未満に低下した。

今では、約6千ドルでゲノムの配列決定がなされ、「千ドルのゲノム」の声も聞こえてくる時代となった。

この5年から10年の間に、多くの国々ではヒトゲノムの配列の決定に成功してきたが、アフリカでは細菌や真菌などの小さいゲノムを配列決定に係わった程度であった。

Fourie-Bassonは書いている。「いくつかのリソースがまず必要だった。高度に洗練された機器、専門的な技術知識それにスーパーコンピューティングパワーが必要とされる。」という話に戻ろう。

MegaMindが所定の場所に設置されると、Stellenbosch大学の中央分析施設(CAF:Central Analytical Facilities)のDNAシーケンシング部門が、複雑なプロセスを開始した。特殊ガラスフローセルにDNA断片をロードして、実際のシーケンシングプロセスを開始したのだ。

シーケンス処理中にMegaMindは蛍光プローブを含む特殊なプライマーを添加する。これらのプライマーはDNA断片に付着し、レーザーによって励起されると蛍光シグナルを発するようになる。

「これらの数百万の蛍光データポイントが顕微鏡レンズを通して収集され、ソフトウェアによって解釈される。ハッブル望遠鏡が星からのデータを解釈するかのように。」と、著者は説明している。

最終的には蛍光データポイントは下流の分析ソフトウェアで使用される単一のデータファイルに統合される。このデータを分析するに、それなりのハードウェアが必要となる。 「このためにStellenbosch大学は、200以上のプロセッサ、1テラバイトのメモリー、60テラバイトのストレージからなる高性能コンピューティングクラスタを購入した。」

MegaMindはちょうど2週間でシーケンシングの作業を完了した。

DNAシーケンシング部門のマネージャーであるCarel van Heerden氏によれば、シークエンシング作業自体は単純明快なのですが、「正確に行われる必要があります。 」

「それはピアノ協奏曲の演奏のようなものです。」と、van Heerden氏は述べている。 「楽譜から音符を読んで、その通り演奏しなければならない。そして、それはピアノを弾くのと同じように、正しくできるようになるまで練習が必要だ。 」