国産スーパーコンピュータ「ExaScaler-1」が稼働開始
株式会社ExaScalerと株式会社PEZY Computingは、PEZY社がNEDO の助成を受けて開発していた世界最大規模となる1,024コアの低消費電力型メニーコアプロセッサ「PEZY-SC」を256個使用し、ExaScaler社が開発した完全開放型で高効率の新液浸冷却システム「ESLC-8」を4台の構成で、最大演算性能395TFLOPSの小型スーパーコンピュータ「ExaScaler-1」を共同開発し、共同研究先である大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構に設置し、11月1日からはシステム名称「Suiren(睡蓮)」としての稼働を開始したと発表した。

初期試験において2014年6月発表のTop500おいては420位に相当する153.7TFLOPSの性能値と、消費電力性能ランキングGreen500では世界第2位の値に相当する4.02GFLOPS/Wを計測している。これらの計測結果は、今月開催されるSC14で発表される2014年11月版Top500と消費電力性能ランキングGreen500に、申請が行われる予定だ。SC14では、KEKのブースで「Suiren(睡蓮)」が、別の共同研究先の東京大学のブースで「ExaScaler-1」がパネル展示され、期間中「Top500」と「Green500」の結果が発表される。
「ExaScaler-1」は、PEZY社が独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて開発した単精度浮動小数点演算性能3.0TFLOPS、倍精度浮動小数点演算性能1.5TFLOPSの1,024コア搭載の低消費電力型メニーコアプロセッサ「PEZY-SC」を64個搭載し、ホストシステム8式を含むシステムを液浸した4台の「ESLC-8」で構成されている。「ExaScaler-1」は、冷媒を室外のポンプで循環させ、同じく室外の熱交換器、ならびに小型室外機により冷却することで、最大負荷時でもシステム全体を40°C以下に保って稼働することが可能となっており、高性能HPCシステムの安定稼働、低故障率、長寿命化、低消費電力化を期待することができるという。
KEKに設置された「ExaScaler-1」は、室内部分は小型の液浸冷却槽4台と冷媒循環用の配管だけの極めて小規模な構成により、6.3 平方メートル程の非常に小さな室内設置面積で非常に小型ながら冷却効率が高く、低消費電力なため、小規模スーパーコンピュータをオフィス環境で運用できる可能性も出てくる。
ExaScaler社の創業者でPEZY社の代表取締役社長である齊藤元章氏によれば、「昨年末に”自分達で独自のスーパーコンピュータを開発する”という構想を打ち上げた時には、PEZY社内でも誰も真剣に受け止める社員がいない状態から出発しました。ExaScalerに至っては、今年3月末にはまだ存在していない状態でした。最終的に PEZYでプロッセサ開発を完了してから7か月、実際のサンプルチップを入手してから3か月で、独自開発したスーパーコンピュータを稼働させた例は、世界中を見渡しても前例が全く見当たりません。また同時並行で、高効率で保守性にも優れた独自冷却システムを僅か6ヶ月の期間で開発出来ましたことは、2つの会社を併せても20 名強の社員数でしかないことを考えますと、異例尽くしの開発であったと言えます。」と語っている。
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Suire(睡蓮)システム室内部 | 液浸冷却用PEZY-SCモジュール |