世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 9, 2013

IDC 全世界でHPC市場7%の年間成長率を予測

HPCwire Japan

ドイツで開催されたISC2013のイベントで調査会社IDCはHPCの世界市場は「大不況」から回復し2016年に向けて複合年間成長率(CAGR)が6.8%から7.8%を見込めるだろうと語った。

グローバルエコノミーが倒壊した後2009年に終わったHPC市場は全体的に回復している一方、市場の各セグメントが均等にと言うわけではない。例えば、IDCの定義によるところの50万ドル以上のシステムであるスーパーコンピュータ・セグメントでは、経済の混乱にもかかわらず一時的な急降下は見られない。

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「ス−パーコンピュータについては景気後退がなかったが、下位半分の市場は縮小した。殆ど半分になった。」とIDCアナリストのアール ジョセフはISC2013の発表で述べた。小規模のHPCシステムの成長は今年の第一四半期にやっと回復の兆しが見えたと述べた。IDCに依れば、ワークグループと部門用HPCシステムのセグメントを足し合わせても2012年時の50億ドルから2016年の70億ドルに成長が控えめにみても期待出来る。

HPCシステムの出費に関して地域により大きな差が生じている。中国やドイツでは過去数年に渡って最も一貫した「ロックステップ」(訳注:それぞれ前の人と同じ足を動かし縦列で前方に動いていく行進の方法)な成長を示している、とジョセフは述べている。この2か国における成長が主にスーパーコンピュータの販売を動かしている。

フランスのHPC市場は中国と同じ規模であるが、2008年からフラットであり年間6,000億ドルを少し下回っている。それがスーパーコンピューターの健全な成長でないとすると、フランスではHPC支出に実質マイナスが見られる

ヨーロッパの政治家達が脳機能と炭素同素体であるグラフェンのモデル化のための10億ユーロ超のHPCリサーチプロジェクトを開始したことについて、ジョセフは賞賛した。「私の個人的見解ではあるが、これは取り得る戦略の最善なもののひとつである:これまでも専門的知識に秀でておりこの先10年も世界をリードしていけそうな一対のアプリケーション領域を選択し、それらに重点的に投資している、と語った。

米国のHPC市場は今でも世界最大であるが「大不況」の影響からはまだ脱し切れていない。IDCの図によると、米国内の全体のHPC市場は2008年に費やした50億ドル弱から昨年2011年の46億ドルになっている。スーパーコンピュータの販売は、もちろんその伸びの上で回復していることを証明しており、50%以上の成長で2011年には18億ドルになっている。

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HPCシステムにおけるグローバルな成長にもかかわらず、HPCシステムの実際の出荷台数は減少している。もちろん、これは「みんな大きなシステムを買っている」と言ったスーパーコンピュータの強力な販売効果にある、とジョセフは述べている。「アクセラレータを付けたり、メモリを増強したりと言ったことに多くの場合関係している」

将来的には、HPCコンピューティングはマクロコンピューティングのトレンドである、モバイルブロードバンド、ソーシャルビジネス、ビッグデータ/解析およびクラウドサービスの「4つの柱」の交差から利益を得るとIDCは予測している。これら「4つの柱」を一緒にすることで、メインフレーム、クライアントサーバといった世界の最初の2つのプラットフォームにとってかわる過程にある「三番目のプラットフォーム」を作り上げる。

「HPCはこれらの多くの中でメジャーな役割をもっています」とジョセフは語った。「私どもはPaypalやGeicoのような企業で使われるHPCを見ています。これらはテクニカルコンピューティングを見るような伝統的なところではありませんが、今ではHPCに移行しているのです。」また、クラウドベースのHPCサービスの出現は、元々HPCのユーザでは無かった組織にテクニカルコンピューティングを広げている。

一旦組織がHPCを採用したら、元に戻ることは滅多にない。IDCは世界的調査尚中で、スーパーコンピューティングを採用した97%の企業が「もはやそれなしでは業務を遂行したり生き残ることができない。」と語っている、ことが分かった。

それから、世界中の国の多くがスーパーコンピュータに優先的に投資を行っていることは、驚くべきことではない。ロシアのデミトリ・メドベーデフ大統領が2009年のスピーチにおいてスーパーコンピュータへのさらなる投資がないと次のように警告している、「ロシア製品は潜在的な買い手にとってもはや競合でも興味もなくなる。」

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また韓国がHPCへの投資を基本的に法律の問題であることにしたことについて、ジョセフは称賛した。「韓国が益々競争的な世界で生き残るには、スーパーコンピュータ産業を育てることを怠ってはなりません。それは先進国における新しい成長要因となります。」と、2010年6月に韓国ハンナラ党の代表チャン・ドゥウン氏が言ったとIDCは伝えている。

計算しないということは競争しないということだ、と企業は言う。しかしエクサスケールのシステムの構築に十分な投資を行わない米国にIDCは警鐘している。HPCへの出費に関するバラク・オバマ大統領の2011年の一般教書演説におけるIDCのスライドの孤独な引用において、大統領は中国におけるスーパーコンピュータの成長について述べただけだ。