世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


6月 25, 2018

TOP500:米国首位奪還!産総研が5位に!

HPCwire Japan

年に2回発表される世界のスーパーコンピュータの性能を競うTOP500リストが6月25日に発表された。今回の大きな変化は首位にアメリカが返り咲いたことだ。これまでは中国が2013年に33.9ペタフロップのTianhe-2Aで首位になって以来、93ペタフロップスのSunway TaihuLightに至るまで中国の独擅場であった。しかしようやくアメリカが首位に返り咲いたのだ!

今回TOP500の首位を奪ったのは米国エネルギー省傘下のオークリッジ国立研究所が構築した「Summit」スーパーコンピュータだ。「Summit」はIBM製でプロセッサにはPower9とアクセラレータとしてNVIDIA V100を搭載している。今回のベンチマークで得た性能は122ペタフロップスで2位のSunway TaihuLightと大きな差を付けている。理論最大性能は187ペタフロップスだ。詳細については先日の記事を参照してほしい。

アメリカが今回威信を掛けていることが分かることがある。(まあ威信を掛けているというよりはプロジェクトのタイミングでもあるのだが。)それは今回3位に登場した同じくエネルギー省ローレンスリバモア国立研究所の「Sierra」だ。このシステムもIBM製でプロセッサはPower9を使用している。LINPACK実行性能は71ペタフロップスで理論最大性能は119ペタフロップスだ。

一方これまで首位であった中国のSunway TaihuLightは2位に下ることとなった。同じく前回まで2位であった中国のTianhe-2Aは4位になってしまった。Tianhe-2Aは順位は下がったが、実は性能は今回アップしている。前回までのTianhe-2AのLINPACK性能値は33.9ペタフロップスであったが、今回は61.4ペタフロップスと1.8倍にも増加しているのだ。これはCPUのバージョンアップと増設で達成したらしい。プロセッサ個数は3,120,000個から現在は4,981,760個と1.6倍だ。

これでアメリカはTOP10の内、1位、3位、7位、8位、9位、10位の6システムをとったことになった。前回までは4システムだったので2システムを加えたことになった。割を食ったのは日本だ。

日本はと言うと、前回登場して4位に食い込んだ海洋研の「暁光」システムがいろいろあって消えてしまい、さらにはアメリカが力を入れてきたので、前回までTOP10に入っていたJCAHPCのOakforest-PACSと京コンピュータが押し出されてしまった。そこに登場した救世主は産業技術総合研究所の「ABCI」システムだ。AI専用マシンなので、これがスパコンか?と言う意見もあるがその話は横に置いておこう。今回5位に入ることができた。「ABCI」システムは富士通が構築し、プロセッサはインテルでアクセラレータにNVIDIA V100を搭載したマシンだ。LINPACKの性能値は19.9ペタフロップスで理論最大性能は32.6ペタフロップスとなっている。これはもちろん国内最高速のマシンとなる。あれ?以前報道された新聞記事では100ペタフロップスではなかったっけ?っと不思議に感じる方もいるかもしれないが、これは精度を何ビットにするかで性能が異なる。32.6ペタフロップスは精度を64ビットにした場合であり、この精度を16ビットにすれば4倍の120ペタフロップスになるのだ。これはAIの計算が16ビットを使うことから計算された性能指標であった。

以上が今回のTOP500におけるTOP10の状況だ。日本のエントリ数は前回35に対して今回は36になっている。詳しい状況については次回、さらに分析を進めて皆様にお伝えしたいと思う。