LINPACKの創造主が新しいHPCベンチマークに光を当てる
Nicole Hemsoth

2013年6月に開催されたInternational Supercomputing Conference (ISC) において、スーパーコンピューティングの能力をしっかり測る基準として、Jack Dongarra博士による現在のLINPACKベンチマークに潜在的に代わるものの必要性が検討された。
その際に、博士は、数人の協力者によって形になっている新しいベンチマーキングの力作を解説した。それは、高性能共役勾配 (HPCG) ベンチマークと呼ばれていた。この努力に関するニュースは、特に科学分野のコンピューター・コミュニティーにおいて、ポジティブな反応を得た。LINPACKによるTop500の上位にあるシステムで実行している現在と将来のシミュレーションに、新しいベンチマークがよりよく適合するだろうだからである。この新しいベンチマークは、2013年11月19日のTop500発表時により詳しく発表され、より広い多数のシステム全体でテストされるために利用可能となる。
Dongarra氏によると、このベンチマークの「アルファ」版を使っている数個のシステムからの報告によれば、まだLINPACKを直ちに置き換える時期ではない。2年後にプライムタイムの準備ができるまでに、多くの微調整を経るであろう。初期の書式は、テストしてコメントするために、ベンダー・コミュニティーへ既に配布された。SC13において始まってから、多くの価値ある洞察に先導されて、さらに改良され、より広くテストするために配布されるであろう。
しかし、コミュニティーは、どこかの時点で何かを始める必要があるし、特に、20年前から浮動小数点演算能力に重点を置いていたベンチマークから、切り替える必要がある。1970年代後期に進化を開始したLINPACKは、浮動小数点演算が得意なCPUが優れていると計測していて、機械の残りの部分、特にインターコネクトによるデータ移動を計測していなかった。
面白いことにしかし、そのようなLINPACKベンチマークで起きたことは、報告される性能がLINPACK性能と劇的に異なることである。Dongarra氏によると、LINPACKベンチマークによる性能と、HPCGベンチマークによる性能は、40はるいは50倍異なることがある。後者の性能は、LINPACKとFLOPS中心のアプローチによる性能とは全く異なる。
Dongarra氏によると、本当のアプリケーションに必要なベンチマークのついては、「CPUについてだけでなく、インターコネクトも。浮動小数点演算を高速にするだけでなく、データの高速な移動も。LINPACKができたのは1970年代であり、浮動小数点演算性能が重要で、そのためのCPUは最も高価な部品のひとつでした。しかし現在、私たちが持っている機械については、浮動小数点演算性能の重要度がシミュレーションに要する時間にとって相対的に下がっています。データと通信に焦点を当てるべきです。」
Dongarra氏の説明によると、それだけではなく、HPCGは、現在シミュレーションされている典型的な問題を、よりよく反映する。例えば、偏微分方程式によってモデル化されている問題を考えよう。疎行列問題 (訳注:係数が疎行列である連立一次方程式) を解く必要がある。これは、LINPACKベンチマークにおいて解かれる、密行列問題とはまったく異なる。
ちょうど今、Dongarra氏と彼の同僚であるMichael Heroux博士が、初期のテスト結果に基づいて、新しいベンチマークを徹底的に論ずることに取り組んでいる。これには、前処理 (訳注:係数行列の不完全ブロック分解によって共役勾配法を加速する手法) を含んでいる。しかし、Dongarra氏によると、これらの全ては、コースのための平均である。
「LINPACKの価値が長年発展してきたのは、長年の調整と、歴史的な基礎によると、指し示せることは気持ちよいです。私たちは、LINPACKさえ調整しようとしています。例えば、オリジナルのLINPACKベンチマークの基準のひとつは、正しい解を得られたかどうかです。とても大きな行列について正しくないことがあったので、私たちは調整しました。」
LINPACKのパイオニアであるDongarra氏は注意深く結論を述べた。「現在および将来のアプリケーションをよりよく反映すると言えるでしょう。1980年代のアプリケーションをLINPACKが反映していたように。ひとつの合意は、計算機メーカーがTopt500で良い結果を得ようと、LINPACKに注目してアーキテクチュアを作ったことです。現在の大規模シミュレーションにおいて、LINPACKはよい指標ではありません。これが、現在の問題を扱うための計算機をどのように設計するか、我々が再び焦点を当て、作り直そうとしている理由のひとつです。」