スーパーコンピュータによって解明された地震と津波の関係性
Oliver Peckham

2018年、インドネシアのスラウェシ島で大規模な地震が発生した。中央スラウェシの首都パルは、予想外の津波に見舞われ、死者は合計で4,300人以上に上った。現在、国際的かつ学際的な研究者チームは、高性能なスーパーコンピュータを活用し、複合災害の謎を解き明かそうとしている。
大きな津波は通常、地震の上下運動によって引き起こされる。そのため、地震が発生し、地面が水平方向に揺れた場合、津波が来るとしても、人々は0.5m未満の小さなものであろうと考えていた。しかし実際には、津波は2mを超える波を運び、建物の2階まで到達した場所さえあった。
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パル湾を横切るモデル化された地震と 津波の可視化(Ulrich et al., 2019) 画像著作権: LMU |
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衛星データはまっすぐで滑らかな断層を示唆していたため、地すべり、衛星では見られない沖合の断層、破裂速度など、研究者は予想外の水の動きについて考えられる一連の可能性を調査した。
この質問に答えるために、彼らはドイツのミュンヘンに近いライプニッツ・スーパーコンピューティングセンターのSuperMUC Phase IIスーパーコンピュータに注目した。2015年に稼働を開始したSuperMUC Phase IIは、6,144のIntel Xeon E5-2697 v3プロセッサで86,016コアを搭載したIBM System X iDataPlexである。Phase IIは、3.6ペタフロップスのピークパフォーマンスを実行することが可能だ。
この研究チームは、560個のPhase IIのHaswellコアで2時間半の地震のモデル化を行った。ここで重要なのは、彼らのモデルが、地震をデータに適合させようとする従来の地震モデルとは異なり、代わりに、断層に沿った物理プロセスを組み込んだ物理学主導のモデルを使用したということである。このモデルを使用し、彼らはいくつかのデータセットの評価を行った。
研究チームは、津波はパル湾の海底の動きを引き起こす地震によって説明でき、地すべりはその深刻さを説明する必要がないことを発見した。具体的には、このモデルは傾斜した断層で非常に速い破裂を示し、主に横方向だけでなく下向きの動きを引き起こした。これは、0.8mから2.8m(平均1.5m)の範囲の海底の垂直変化をもたらし、パル津波が深刻で予想外の高さであった原因である可能性が高いと結論付けた。
「地震変位が、おそらくパル津波を発生させる重要な役割となったという発見は、地震自体が非常に速い動きであったことと同じくらい驚くべきことです。」と、ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学の博士課程の学生であり、この論文の筆頭著者であるThomas Ulrichは述べた。「私たちの研究が、世界中の同様の断層系で局所的な津波を引き起こす可能性のある構造設定と地震物理学についてのより綿密な調査に繋がることを願っています。」
この研究について
この記事で言及されている研究は、2019年8月号 のPure and Applied Geophysicsにおいて、“Coupled, Physics-Based Modeling Reveals Earthquake Displacements are Critical to the 2018 Palu, Sulawesi Tsunami”として公開された。著者は以下の通りである「。T. Ulrich, S. Vater, E.H. Madden, J. Behrens, Y. van Dinther, I. van Zelst, E. J. Fielding, C. Liang and A.-A. Gabriel
Gauss Center for Supercomputingによって投稿されたこの研究について述べた元の記事を読むには、ここをクリックしてください。