世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


7月 18, 2013

HPCはARMのロングテールに乗る

HPCwire Japan

Nicole Hemsoth

我々が64ビットARMベース・プロセッサの新たな時代へ移行すると、将来のHPC環境でのARMの役割は投機対象の主役になるだろう。 とは言うものの、既にどのようにARMをHPCで利用できるかを探究する幾つかの注目すべき研究や実用的な試みが存在している。

例えば、バルセロナ・スーパーコンピュータ・センターのチームは、最近、HPCアプリケーション向けの低消費電力のサーバの研究を行っており、これも同様な話題としてISCで人気の的となるセッションでもあった。 NVIDIAを含むその他のベンダーは、GPUとARMをサンドイッチして低消費電力に注視した高性能サーバ(プロジェクト・デンバー)を開発することを模索している。 そして、もちろん、ARMライセンスを保持した誰もが、現在のコアやI/O、その他の限界を見極めようとその方策を模索している。

2014年頃の64ビットARMの爆発的増加に先行して開発を進めている彼らでさえも、ARMに関する話は、まだおしゃべり程度である。我々が、HPからのMoonshot製品(少なくとも最終的には、HPCユーザに幾らかの柔軟性を提供できるだろう)における低消費電力のアプローチについて論議した一方、新しいデータセンターに関するAMDの戦略についてCalxedaのカール・フロインドから最新の見解を得た。

フロインドは、挫折する前にトップに上がるサーバの動向の数を観察している・・・なおも粘り強くしがみついていることに極力言及しないように。 彼は、IBM(Big Blue)のPowerシステムおよびTivoli製品のエバンジェリストであり、SGI、HP(ワークステーション側)とCrayなどの他のHPC関連企業でも同様である。

Calxedaは、ARMのA57技術ライセンス数が増加している一企業であり、64ビットプラットフォームを構築している。 彼は、HPCは彼らの最終的な展開のため直接的に集中している場所ではないことを認めている一方、彼は将来的にARMが強い役割を持っていると認識している・・・しかし、当然のことながら、始めに行うべきいくつかの作業がある。 確かにDellやHP、ペンギン、その他を含むパートナーか​売り上げを得てきた彼らA9製品は、HPCでの限定的な役割を担っているが、特に効率性の数字は、エクサスケールへのビジョンを持つスーパーコンピューティング関係者の関心が急速に高まっている。

フロインドは、一方で大規模データセンターの市場に続く、特定の分野(HPCを含む)において、幾つかのARMベースのベンダー間で激しい競争がある事を察知している。 すべてARMの同じA57コアを使用しており、各社は付帯する演算コア、インターコネクトおよび管理機能等で差別化を図っている、と彼は指摘している。

効率性はゲームの名前だが、現時点では、高いコア数とチップのクロック速度がARM亜種間での劇的な性能差の要因として現れている。フロインドは、倍精度演算の追加、インターコネクトの開発とアーキテクチャライセンスに基づく新たな機能の追加が出来る事によって、データセンター市場全体では小規模なHPCの割合でさえも、ARMを最前線へと押し出す事ができることに同意している。

これらのこと全てを念頭においても、3年間でTop500が低消費電力プロセッサによって支配されることは現実的な発想ではないが、しかし、それらがエクサスケールシステムのデータインテンシブなニーズを処理するための明確な市場がある、とフロインドは言う。 例えば、エクサスケール時代が抱える大きな課題のひとつに超大規模なログファイルの処理がある。スーパーコンピューティング・サイトは、特に性能差がある程度の範囲で接近している場合、効率的なARM搭載マシンにこの処理を任せることは理に適っている。

フロイントは、少々概念的ではあるが、Square Kilometer Array(SKA:大規模分散電波望遠鏡)やいくつかの国立研究所におけるデータ・インテンシブな需要に対するARMへの期待を示した。 “エクサスケール・レベルのシステムや大規模研究プロジェクトにおいて巨大なログファイルを隅々に渡って処理するためにARMを使う事に特別な関心を示しているサイトが幾つかあります。”

ARMは依然、性能開発の初期段階であるが、64ビット機能の追加と新しい機能強化を図ることでエコシステムとして成熟し、浮動小数点演算性能は17倍程度に向上するだろう、とフロイントは予測している。 公平を期すために、ハードルはかなり低めなので、他のチップメーカーがそうであったように、劇的な成長は最終的に緩和されるだろう。 それでも、フロインドは、ARMはIntelが戦っている低速なコアとクロックの争いに対抗する新しい可能性を秘めていると主張している。