中国のスパコン戦略の現状
Tiffany Trader

中国のTianhe-2スーパーコンピュータはTOP500リストにおいて3度も1番の位置を保持することに成功しているために、おおよそ34ペタフロップス(LINPACK)の怪物が実際にどのくらい利用されているのか多くの注目を集めている。実際に数年間において、中国におけるスーパーコンピューティングのコンセンサスはアプリケーションソフトウェアの専門知識の不足を中心としている。
先日、複数の中国のニュースサイトに基本的に同じ批判が出てきている:中国はハードウェアにお金を掛け過ぎており、ソフトウェアへの投資が不十分である、というものだ。運用コストももうひとつの課題だ。Tianhe-2の電気料金は1日あたり400,000元から600,000元だ(6,500,000円から10,000,000円)。
Tianhe-2は24億元(390億円)のコストで国立国防技術大学によって構築された。South China Morning Post の記事によると、4月に試験運用が始まり、これまでに34パーセントの能力で120のクライアントに提供しており、鉄道設計、宇宙物理学や遺伝学になどのプロジェクトをサポートしている。しかし、プロジェクト後援者からのソフトウェアサポートの欠如のために、利用者は自分達でプログラムを書かなくてはならず、高額なマシンを有効に利用できていない。
「計算能力の面では世界の辺境にありますが、スーパーコンピュータの機能においては未だアメリカや日本のものを引き離しています。」と、中国科学院のコンピュータネットワーク情報センターの副所長であるChi Xuebinは述べている。「それはスーパーボディーを持った巨人の様ですが、思考の魂をサポートするソフトウェアを持っていないのです。」
これらの主張に対する反論では、スーパーコンピュータのチーフ設計者である長沙の国立国防技術大学のLu Yutongが議論に参加する。Luはシステムが「理論的に強力である」だけという主張を問題視し、LINPACKベンチマークは実際の性能を計測していると述べている。彼女はまた、Tianhe-2がアメリカのTitanとSequoiaマシンとほぼ同等の電力消費であるというTOP500を参照して、Tianhe-2があまりにも多くのエネルギーを食っているという主張に対し反論した。LuはTianhe-2が日本の京コンピュータよりもエネルギーを使っていないと付け加えている。
実用アプリケーション上での性能数値を重視しているという、中国のコンピューティング戦略の最もどろどろした批判の一つに対して、Tianhe-2はエネルギー、気象、航空宇宙、生物医学および製造産業の分野に対して貢献しているとLuは回答している。彼女はまた、マシンが企業、アカデミアそして政府系研究者を含む幅広いユーザをサポートしていると語った。さらなるデータポイントとして、Tianhe-2上で動いている地震シミュレーションソフトウェアであるSeisSolがGordon Bell賞にノミネートされたとLuは付け加えた。
しかしLuは1点について認めた、ソフトウェア開発だ。「中国はまだソフトウェアで遅れており、効率性の高いソフトウェア開発は国家全体の科学技術レベルに依存しています。」と認識している。
MarketWatch のLauraによるもう一つの批判は、中国のソフトウェアの腕前に対する疑問だけでなく、さらに、最も高価な数値演算専用コンピューターの厄介な低利用率に目を向けている。この著者はNewEaseと呼ばれる中国の新しいポータルが中国のスーパーコンピュータが科学研究に利用されているのが20パーセント以下であると主張したレポートを引用している。
「政府の莫大な投資で作られた多くの大規模マシンは、中国の伝統的な官僚管理システムにおける基本的な欠陥のために、作られた後アイドル状態で置かれているか、もしくは途中で放棄されているようです。」と彼は述べている。
彼によると、NewEaseレポートは国の最も高価なスーパーコンピューティング・プロジェクトは無駄になっていると言っている。知られていることだが、現在の世界最高速システムの前身であるTianhe-1は、伝えられているところによれば、2013年から使われておらず、中国中央部の長沙の漏れのあるカビ臭いコンピュータ室でアイドル状態で置かれている。
どうやらコンピュータは湖南大学に移送されることになったが、大学と湖南県政府との間でシステムの委託について論争があった。政府側の関係者は移送が8月初旬に完了すると述べている。
中国は着実にスーパーコンピュータの力を増大させてきており、TOP500リストのシェアを15.2パーセント(76システム)に押し上げている。これは232台のシステムを運用し46.4パーセントのシェアを持つアメリカについで2番目である。