世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 3, 2022

マイクロソフト、英国気象庁の220PBのテープ・トゥ・クラウド移行をテープアーク社に委託

HPCwire Japan

Oliver Peckham

約2年前、英国の気象庁(Met Office)は、気象・気候アプリケーション専用の世界最強のスーパーコンピュータを実現するため、12億ポンドを投じるという驚くべき計画を発表した。それから1年後、気象庁はマイクロソフト本案件をを落札し、AMDとHPEのハードウェアを使用し、Azureクラウドとの統合を計画していると発表した。現在、このシステムは今年7月に稼働予定と聞いているが、より現実味を帯びてきており、オーストラリアのテープ・トゥ・クラウド企業であるテープアーク社が220PBを超える気象庁のテープデータをMicrosoft Azureに移行するために導入される。テープアーク社によると、これはこれまでで最大のテープ・トゥ・クラウド移行プロジェクトになるとのことだ。

2017年に設立されたテープアーク社は、「(自社の)仮想テープライブラリと今日の技術を使用して、昨日の問題を解決するためのマルチペタバイトのデータ移行に対する顧客中心のアプローチ」(つまりテープストレージ)を提供すると謳っている。テープアーク社の顧客には、Fox Sports、Chevron、BP、Warner Brosなどの大手企業が含まれており、主なサービスの1つとしてテープからクラウドへの仮想化を提供しており、Azure、Google Cloud、AWSに統合されており、気象庁のAzure対応スーパーコンピュータに最適なものとなっている。

気象庁のデータは、数十年にわたる気象・気候観測の220PBを超えるテープストレージで構成されている。この分野は膨大な量のデータを生成することで知られている(さまざまな観測機器の動作速度や分解能が時間とともに高くなるにつれて、その量はますます増加している)。ほんの数年前、気象庁はすべてのデータを保持するのに苦労しており、Oracleと契約してテープストレージの容量を2015年の60PBから2020年の1,200PBへと13倍に増やした。現在では、クラウドに移行しているようだ。マイクロソフトは、ほぼ4エクサバイトのデータをサポートできるアクティブなデータアーカイブシステムを提供すると主張している。このクラウドデータシステムは、マイクロソフトの「プロジェクト・シリカ」(1枚あたり75GB以上のデータを格納できる溶融シリカ製プラッターにアーカイブデータを格納する方法)によって提供される可能性がある。

テープアーク社は、持続可能性を強調したマーケティングを行っており、気象や気候に焦点を当てた研究活動を支援するためにマイクロソフトと協力できることを喜んでいるようだ。

テープアーク社の創設者兼CEOであるGuy Holmesは、「地球上で最も貴重なデータコレクションを解放し、新しい発見を可能にするという大きな目的に向かって前進し続けるマイクロソフトと、このプロジェクトで協力できることを大変うれしく思っています」と述べている。「気候変動や地球温暖化に関するプロジェクトでこれを行うことは、テープアーク社の全チームに真の目的意識を与えています。」

この数十年のデータが可能にした新しいスーパーコンピュータは、4つの「象限儀」で構成され、再生可能エネルギーで完全に駆動し、気象庁がより早く、より正確に悪天候の警告を出し、気候変動のモデリングを改善するのに役立つだろう。

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