インテル、HPCの発展のために未来のプロセスを描く
Nicole Hemsoth

「この市場、この業界はかなり基本的な転換の時期を迎えている。」と、Intel副社長兼HPC部門ゼネラルマネージャーのRaj Hazra氏は、SC14での同社説明会で今後のHPC向け投資に関連して語った。
このコメントは、スーパーコンピュータトップ500リストに大きな変化が見当たらない事や、HPCの勢いが突然停止してしまったようなSC14の会場での雰囲気に対するものであった。Hazra氏を含め多くの人々は、現在の性能、効率、およびコードの傾向を一変させるような事態が進んでいると見ており、今は一時的な停滞に過ぎないという認識である。チップのトップメーカーからの将来に対するこのような見解は歓迎されるべき内容である。
既に多くの人が知っているように、Trinity、Coriそして新たに発表されたKAUSTなどの大規模スーパーコンピュータに装備されることになっている2015年に出荷予定のKnights Landingチップの詳細をインテルは明らかにした。何故この段階でそれらの表明がなされたのかは、考えてみる価値があるだろう。さらに、Xeon Phiの次の次の世代のプロセッサであるコードネームKnight HillのSC14での発表ももうひとつの驚きである。
Wuishpard氏は「我々はXeon Phiファミリーに対して、将来にわたって継続的な投資を行っていきます。ある顧客は過去20年間に6つのコードにそれぞれ5億ドルもの投資してきており、これからはメニーコアアーキテクチャーのKnightファミリーをサポートしていく計画である、と我々に語っています。それという継続的な投資とは大いに関係があります。これは顧客に対する企業責任であり、我々はKnightファミリーが一過性のものでは無い事を明確にしたいのです。」と述べた。
Wuishpard氏は、Knightファミリーは今後も多年にわたって投資されていくということを顧客にはっきりと提示することが重要である、と語ります。「私たちはKnights Landing出荷のために着々と準備を進めています。これまでのところ、Knights Landingを組み込むボードやシャーシの製造に50社以上のシステムプロバイダーが契約しており、100ペタフロップスを越える顧客の導入計画があります。そしてさらなる調達が期待されています。殆どの顧客にとっては、Knights Landingは現在のXeonとバイナリ互換を持つソケット部品でしょうが、それとは別に近い将来に正式リリースとは異なるタイミングで提供されるカードから恩恵を受ける利用形態もあるでしょう。」と彼は述べた。
インテルは60コア以上と言うだけで、Knights Landingチップに正確にいくつのコアが搭載されるかまだ明らかにしていないが、従来OmniScaleとして知られていたOmniPathファブリックが14ナノメートルプロセス技術が適用される領域にに組み込まれることを今週始めに明らかにした。倍精度演算でピーク性能3テラフロップスに達すると期待されている。この話は、Hybrid Memory Cubeを現世代のXeon Phiよりもはるかに小さいスペースにプロセッサともども組込むという、インテルとMicronとの共同作業に関する昨年のニュースとも合致する。
Wuishpard氏は将来のアーキテクチャの仕様を決定するのは、メモリとインターコネクトだけではなく様々な要素があると言う。Knights Landingの10ナノメートル版と思われるKnights Hillついてはまだ詳細が明らかにされていない。これまでのところ、いろいろな憶測を呼ぶコード名以外は明らかにされていない。しかしインテルにとって、現時点でその詳細を公表することは重要ではなく、むしろ従来通り、新製品が出荷される十分前に、それを開発しているチームがすでに存在している事を示すことの方が重要である。これは、過去のコードに対する投資とこれからのメニーコアアーキテクチャへの移行はインテルによりうまく進むという事を重要顧客に示すというWuishpard氏の話に繋がっている。
NERSC含む広範な国立研究所や学術センターなどの独自インハウスコードを持つ顧客とオンサイト作業を通じてインテルが継続的にフォーカスしてきた開発前線におけるコードの近代化については、これまで多大な努力が払われてきている。そして今後は、近々登場するKnights Landingベースのマシンにそれらのコードを適応させる必要がある。
Hazra氏並びに彼の同僚でワークステーション&HPCのジェネラルマネージャーであるCharles Wuishpard氏によると、今インテルはチップ単体に関する思考を停止し、どうすればシステム全体、あるいはプラットフォーム指向を取れるかを考える時期にあるとのことである。LustreやOmni Pathファブリックへの投資やシステムのあらゆる局面でのコード近代化の推進を踏まえて、Intelはハードウェアとソフトウェア双方の協調設計とそれらの継続的な統合を介して指導的役割を果たそうとしている。
「HPCの世界で我々は単なるチップメーカーではありません。」と語るHazra氏は、さらに続けて「データが計算され、移動し、格納されるのであれば、我々はその全てに係わります。これは野心とかビジネスモデルといった問題ではなく、それがスケーラブルなシステムの設計方法なのです。対象とするワークロードに高度に最適化されたバランスのとれたシステムを設計するためには、システムレベルから部品間の相互作用まで含めて設計する必要があるのです。」
「我々はシステムをいろいろの角度から検討しており、より効率的なコンピューティング、さらにプログラムで制御可能なコンピューティング、そしてその設置の容易さを追求しています。」とHazra氏は指摘している。さらに彼は、「現在のKnightsファミリーのロードマップにおいて何が新しいかをお知らせする一方で、既にインテルの戦略は決定されており、次世代HPCシステムの各レベルにエコシステムを提供するという期待に応えるべく事業は遂行されています。」と語った。「私たちは数年前にメニーコア領域でいくつかの賭けをしましたが、それが功を奏し始めている事に興奮しています。それは、エコシステムを稼働させる着実なそして継続的な取り組みなのです。」