世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 12, 2015

GPUを使うシミュレーションで心臓を研究

HPCwire Japan

Chelsea Lang

心臓病は世界的な死亡原因の一位であり、心臓のリズムの障害、即ち不整脈は、深刻に懸念する価値がある。

オーストラリア DarlinghurstにあるVictor Chang Cardiac Research Institute (VCCRI) では、不整脈をよりよく理解し、治療につなげるために、スーパーコンピューターを使っている。

CSIROのBraggスーパーコンピューターを使って、VCCRIの計算心臓病専門医であるAdam Hill博士は、遺伝的基盤の調査に加えて、異常な心臓のリズムの研究をリードしてきた。

理想的な状況において、心臓は、メトロノームのように動作する。即ち、電気的な刺激によって、血液をポンプのように運ぶ。この動作がうまくいかず、心臓の効率が落ちると、最終的には死に至る。

CSIROのGPUクラスターは、オーストラリア最初のノーベル賞受賞者であるLawrenceとHenry Braggにちなんで命名された。このシステムは、Xenonシステムとの協業を通して2009年に始まり、定期的に更新され、2014年のTOP500リストの154位になった。このクラスターは、LinuxとWindowsの両方のOSを実行でき、Windows HPCとして世界最速のひとつである。

次のように構成されている。

  • 各ノードに、128個のデュアルXeon E5-2650 8コアプロセッサー、即ち合計2048コア、RAM 128 GB、SATA ストレージ500 GB、FDR10 Infiniband インターコネクト
  • 384個のKepler Tesla K20 GPU (合計950,976 CUDA コア)
  • 162 ポートInfiniband スイッチ
  • 大規模なNFS/Windows共有ファイルシステム

Braggによって、初めて不整脈の内部の仕組みを見られたと、研究チームは述べている。NVIDIAのGPUによって、CSIROの科学アプリケーションを6倍から200倍高速化できた。従来のシステムでは21年間かかったであろうジョブを、10日間で処理できた。

実際の生物と同じくらい速くアプリケーションが動くことを、Hill博士は望んでいる。そうなれば、医師がよりよく心臓を診断できるようになる。

次の段階では、心臓の障害がよりよく理解され、患者によって障害が異なる理由が解り、最終的にはよりよい治療によって、より多くの命を救えるであろう。

Hill博士の研究の全文はここにある。