PEZY、2019年にエクサフロップスマシンを射程に
今週8月25日に理化学研究所情報基盤センター主催で、最近Green500で一位に輝いたPEZY Computing社およびExaScaler社の共同開発である「菖蒲」システムのワークショップが開催され約100名近い参加者がGreen500で一位を取るまでの道のりに耳を傾けた。

ワークショップの講演の最後にPEZYグループの創業者であるPEZY Computing社の齊藤元章氏があくまでも個人的な計画ではあるがという前提で、今後のロードマップについて講演を行った。それはかなり衝撃的な計画である。
今回Green500で一位を獲得したシステムはExaScaler-1.4という世代である。Green500の記事にも書いたが、今回のシステムは動作クロックを含め実は元々のスペックには達していないために1.4という世代になったそうだ。現在も改良を続けており、来年2016年10月までには1.6という世代にして性能の向上を図り、システム消費電力性能をワットあたり現在の7GFLOPSから10GFLOPSに向上させるとしている。
また、プロセッサ自体も次世代の開発に着手しており、次のPEZY-SC2ではコア数は現在の4倍の4,096コアとなり、現在はインテルXeonを使っているホストプロセッサも同じ半導体上に搭載させる予定だ。またノード間接続も現在のInfiniBand FDRから100GbpsのEDRするとしている。この世代はExaScaler-2.0となり、2017年にリリースする計画だ。ただ、この時点においてもエクサフロップスのマシンを作ろうとすると電力が50MW必要とする。これは現在のデータセンターの規模ではなかなか難しい。京コンピュータを擁する理化学研究所計算科学研究機構のデータセンターでも最大20MWなのだ。
齊藤氏はさらなる計画もこの講演で説明した。それはExaScaler-3.0世代で2019年にリリースしたいとしている。プロセッサも3世代目のPEZY-SC3となりコア数は8,192コアで動作周波数も1.25GHzで、倍精度演算性能で20TFLOPSとなる。この世代においてもBPF(Byte Per FLOPS)は0.5としたいと付け加えた。さらに、ノード間通信もInfiniBandから独自のインターコネクトにする計画だ。このExaScaler-3.0でエクサフロップス・マシンを製作した場合の必要な電力は25MWとなり、かなり現実的な値となってくる。
しかしただ単に理論性能がエクサフロップスになっても仕方がない。スーパーコンピュータは単なる道具だ。今回の講演の中でも複数の講演者が力説するように、実際にはアプリケーションの性能が重要である。とは言え、やはりエクサフロップスが現実的なものになることに興奮を隠しきれないワークショップであった。