東京大学と筑波大学、日本初のGH200ベースのスーパーコンピュータ「Miyabi」、運用開始
2025年1月14日、最先端共同HPC基盤施設 (JCAHPC) が、新しいスーパーコンピュータ「Miyabi」の運用を正式に開始した。このシステムは、AI技術と科学計算を融合させた新たな形の研究基盤であり注目されている。「Miyabi」は、日本のHPCセンターとして初めてNVIDIA GH200 Grace-Hopper Superchipを採用しており、JCAHPCにとっても初めてアクセラレータを取り入れたシステムだ。また、GH200は日本のフラッグシップスーパーコンピュータ「富岳」と同じARMベースのプロセッサを使用している点も特徴だ。

日本初のGH200採用とアクセラレータ導入
Miyabiに搭載されたGH200 Grace-Hopper Superchipは、GPUとCPUを一体化した最新技術を持つプロセッサだ。この設計により、プロセッサ間のデータ通信が高速化され、特にAIや科学計算において効率的な運用が可能となる。JCAHPCとしても、これまでのCPUベースのシステムから一歩進み、GPUを利用したアクセラレータ技術を導入。これにより、膨大な並列計算が求められるAI処理やシミュレーションが格段にスピードアップするとしている。「GH200の採用は、これまでのシステム設計を大きく変えるものです。GPUとCPUを一体化した構造は、エネルギー効率の向上だけでなく、プログラムの開発や運用の柔軟性を高めます」と施設長の朴泰祐教授は語る。
Miyabiのシステム構成
Miyabiは2つの主要なサブシステムで構成されている。
1. Miyabi-G
GH200 Grace-Hopper Superchipを搭載し、GPUを活用した高性能計算を実現するシステム。全体の性能の大部分を担い、78.8 ペタフロップスという理論ピーク性能を誇る。
2. Miyabi-C
Intel Xeon Maxプロセッサを搭載したCPUベースのサブシステムで、従来型の非GPU化アプリケーションにも対応可能。190ノードで構成され、主にGPU化が難しい計算用途をサポートする。
これら2つのシステムは、高速インターコネクトInfiniBand NDRで接続されており、大規模データ処理や複雑なシミュレーションに対応している。
AIと科学研究の融合「AI for Science」
「Miyabi」は、AI技術と科学計算を組み合わせた「AI for Science」を推進するためのプラットフォームとしても設計されている。これにより、以下のような分野での活用が期待されている。
- 地震解析と気候変動解析
- 宇宙物理学
- 医療とバイオインフォマティクス
- AI開発
これらの研究は、Miyabiの高性能GPUを活用することで、従来のシステムでは到達できなかった新たな発見に繋がると期待されている。
運用体制と今後の展望
Miyabiの計算資源は、筑波大学と東京大学で1:2の割合で分配される。また、文部科学省のHPCIプログラムを通じて、全体の30%のリソースは国内外の研究者に利用される予定だ。システムは6年間にわたる運用が計画されている。運用開始の式典では、施設関係者が以下のように述べた。「Miyabiは性能、効率、そして柔軟性のすべてを兼ね備えたシステムです。これにより、国内外の研究者が新しい発見に挑戦できる環境を提供します。」
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朴 泰祐 施設長(筑波大学計算科学センター長)(右)、千葉 滋 副施設長(東京大学情報センター長)(左) |