世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 14, 2015

インテルのBryantがエクサスケールへの道程を説明

HPCwire Japan

Doug Black

SC15の月曜日の夜のプレナリーセッションにおいて、インテルのデータセンターグループのゼネラルマネージャでシニア副社長であるDiane Bryantにより行われたのは、科学的研究のそのルーツからビジネスの知見のためのツールを提供することまでの業界の進化を見つめ、そして「再帰」哲学的議論 – 機械学習で推進されるHPCにおけるイノベーション –を行って、HPC業界のこれまでの業績を祝賀するレビューであった。

Bryantはまた、世界の最強のスーパーコンピュータの恒例のTop500リストにおけるピーク性能の数値が遅くなっていることを指摘する批評家に対する疑いにも関わらず、ムーアの法則を恒久化する取り組みに基づくエクサスケールへの同社の方向性を牽引する、インテルの技術のオールスター・キャストを公開した。実際には、Bryantのプレゼンテーションは、ハワイでの彼の引退生活からの電話の録音におけるGordon Moore自身を含んでいた。

しかしほとんどは、BryantはHPCが科学的発見やビジネスにおける技術革新を行った変革的影響を強調した。

「おそらく、最後に科学が急速に変わったのは
ガリレオが望遠鏡を発明した400年以上前でした。」とBryantは語った。「肉眼を越えてビジュアルな観測の範囲を広げたのです。科学計算は全くこれに似たようなことをしてきており、人間の脳の直観的で分析的処理能力を超えて探求の範囲を広げているのです。HPCを使うことで、10年前には想像することができなかったことを今は見れるようになったのです。」

その根本的な変化は、処理能力における情け容赦のない機能強化によって引き起こされており、そしてBryantは親しみがあるが、それでも印象的なシステムの当時(20年前)と現在の比較のいくつかを提供した。例えば、1997年の年代物のインテルASCI Redスーパーコンピュータの2台分の能力は、80億個のトランジスタを搭載した1個のインテル「Knights Landing」Xeon Phiコプロセッサと同じ能力である。TOP500リストで1位にランクされている中国のインテルベースのTianhe-2はASCI Redの25,000倍の処理能力を持っており、20倍以上の電力を消費し、ASCI Redではテラフロップス当り1千3百万ドル以上掛かっていたのが、テラフロップス当り1500ドルのコストになっているのだ。

改善した価格性能比は結果として、HPCシステムを中企業を含む幅広い領域まで拡大させることとなった。例えば: 18輪のセミトラックの空力特性の改善のためにオークリッジ国立研究所のJaguarスーパーコンピュータを使ったSmartTruch技術は、年間燃料コストを190億ドル削減する結果となったのだ。

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Intel’s Diane Bryant talks exascale at SC15.

 

HPCの民主化が明確である一方で、HPCは長い道のりであるとBryant は述べた。彼女は世界中のすべてのサーバのたった10パーセントがHPCクラスタとして稼働しているという研究を引用した。米国の製造業の10パーセント以下がHPCの技術を採用しているのだ。

「現在のHPC市場は非常に強力ではあるのですが、比較的にまだ小さいのです。」とBryantは述べた。「HPCの商業的利用は初期の失速状態にあります。製品モデリング、プロトタイピングやシミュレーションへの物理からデジタルへのシフトはまだ到達点には達していないのです。」

これは質問を提起する: 何故? 「答えは複雑性です。まだ使うことは難しく、アクセスするのも難しいのです。」

必要なのは変化のための触媒であり、Bryant は、米国単体で1億3千5百万人以上の愛好家と290億ドルの収入がある「メーカーの動き」がHPC技術におけるはるかに利便性をもたらす力となるかもしれないと予測している。

エレクトロニクス、ロボット、3DプリンティングやCNCツールの利用のようなエンジニアリング指向の研究に多くが関与するメーカーが、クラウドを介して提供される最適化インフラへのHPCへのアクセスによって可能となるとBryantは述べ、イノベーターが創造し、協調し、製造して顧客に到達する方法を変革しているのだ。

「メーカーのコミュニティーは、カウンターの動きとして、HPCを変換することができます。」と彼女が語った。「それは広大かつ安全なコラボレーション機能を持つ新しいシームレスなワークフローを介した計算パワーへのアクセスを行う“簡単ボタン”のインストールを強いるのです。メーカーはHPCコミュニティーに影響を与え変革するはずです。」

Bryantによるとさらに重要なのは、Bryantが「HPCが科学を変えていくにつれ、科学はHPCを変え、そして私たちを前に押し出す」と定義する再帰に関連付けられる、近年HPCにおきて最も話題のアプリケーションに適用されている機械学習の始まりである。

「我々はデータが画期的なものである転換点のステージに急速に近づいています。」と彼女は述べた。「それはHPCを全く新しい可能性の領域に置くのです。基本的にHPCはこれらの複雑な機械学習モデルを教育するために必要です。HPC無しでは、これらのモデルは事実上役に立たないままです。HPCは膨大なデータセット上での集中的な演算パワーの実行を活用することで、未来の事象を予測する我々の能力を導いてきました。そして次に、HPCは機械学習によって変換されているのです。なので、シミュレーション主導型科学の古典的なHPCのアプローチは今やデータ主導型科学に転換されています。」

彼女は、機械学習への広いアクセスを推進する上でパックをリードするハイパースケール・クラウド・サービス・プロバイダーと共に、人間主導型から機械主導型のサービスに進化している農業、教育、交通の3つの業界を挙げている。