世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 22, 2015

Titan、爆発星のシナリオを探る

HPCwire Japan

Stony Brook大学のMichael Zingaleが率いるチームは、米国エネルギー省オークリッジ国立研究所のTitanスーパーコンピュータを利用して、Ia型超新星の発生メカニズムを研究している。Titanは、DOE科学局の利用者施設のひとつであるOLCF(Oak Ridge Leadership Computing Facility)のフラッグシップ機である。このチームの最新の研究は、Ia型超新星のなかでも二重爆発超新星として知られている単一星の二度にわたる爆発のプロセスに焦点を当てている。

今年、チームは白色矮星二重爆発の三次元、高解像度の熱核燃焼解析を終えた。この研究は2013年にこのチームが行った最初の超新星の誕生シナリオの三次元シミュレーションを発展させたものである。Jonathan Hinesによって書かれた本研究の記事はオークリッジ国立研究所のサイトに掲載されており、以下にその抜粋を示す。

「三次元シミュレーションにより、我々は対流燃焼の領域がある条件の下に星内部に深く深く掘り下げられることを見ることができた。」とZingaleチームの大学院生であるAdam Jacobsは述べている。 「より高い質量、さらなる燃焼が対流をより激しくする。この結果は、そのに続く爆発を詳細に三次元で探る今後の研究に有用であろう。」

Ia型超新星の起源を探ることにより、Zingaleチームは初めて物理的に現実的な、二重爆発超新星の最初から最後までのシミュレーションの基盤を構築した。堅牢な最初から最後までのモデルの作成は、星の爆発に関する信じられない程の物理学知見を獲得する以上に、天文学者が夜空に観察する恒星の現象を理解する助けとなり、さらには宇宙論的測定の精度を向上させる。

このシナリオをテストするには、Zingaleチームは亜音速流体力学コードMAESTROを使用して、18種類の二重爆発モデルのシミュレーションを行った。シミュレーションは27ペタフロップスのピーク性能を持つTitan(CRAY XK7)の5000万コアx時間を配分して実行された。その結果はINCITE(Innovative and Novel Computational Impact on Theory and Experiment)プログラムで表彰され、DOEの核物理局もチームのこの研究をサポートしている。

各モデルにおけるヘリウムシェルと炭素 – 酸素コアの質量を変化させることにより、MAESTROは爆発につながる可能性のある範囲を熱核ダイナミクスにより計算した。さらに、チームはコア温度が摂氏約1000万度「ホット」および100万度「コールド」についてそれぞれ計算を行った。

詳細な三次元情報により、チームは亜チャンドラセカール星の表面に「ホットスポット」が形成される事を見つけた。そこでは星はヘリウム燃焼熱を十分な速度で発散することができない。シミュレーションは、条件が整えばその蓄積が暴走反応につながる可能性があることを示している、とJacobsは述べている。

着火・爆発フェーズと呼ばれる二重爆発の次のステップに向けて最新の知見を解釈する前に、Zingaleチームはより現実に近い物理を計算し、その結果シミュレーションの精度が向上するようにMAESTROのアップグレードを計画している。Titanでは、これは重い計算負荷を従来のCPU利用から、高い並列性を持ち高効率なプロセッサであるGPUに移行することを意味する。

OLCFのOscar Hernandezと協力して、チームはMAESTROの最も付加の高い計算、即ち星の核融合の追跡、核合成と呼ばれるエネルギー放出プロセスの部分を取り出すことが出来た。二重爆発の問題については、MAESTROはヘリウム、炭素、酸素の三つの要素のネットワークを計算している。GPUを活用することで、Zingaleチームはこれを十要素程度にしたいと考えている。PGIコンパイラに含まるOpenACCコンパイラディレクティブの試用により400パーセントのスピードアップがこのコードで達成可能であることが示された。

「今のところ、X線バーストによる反応ネットワークは11の核を含んでいる。我々はそれを40にしたい。その為には16倍の計算能力が必要になる。それは唯一GPUにより実現出来るだろう。」と、Zingaleは語った。

MAESTROのようなコードにとって、現世代のスーパーコンピュータのパワーを最大限に引き出すことは、次世代のシステムをより良く利用する事に繋がる。GPUを搭載した次世代OLCFシステムであるSummitでは、Titanの少なくとも5倍の性能を実現されることが期待されている。

記事全文は次のURLに掲載されている。https://www.olcf.ornl.gov/2015/12/08/titan-helps-researchers-explore-explosive-star-scenarios/

出典:オークリッジ国立研究所
画像:オークリッジ国立研究所