世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


12月 25, 2015

ビッグデータがアニメで南極底層水を表現

HPCwire Japan

オーストラリアで最強のスーパーコンピュータであるRaijinで生成されたデータを使って、南極周りの世界で最も高密度で低温な海水の移動の非常に詳細なアニメが作られた。

気候システム科学中核ARC研究センターのANUハブの主任研究員であるAndy Hogg博士が、国立計算基盤のVizLabチームと協力して高解像度海洋モデルを使ってこのアニメーションを作成したのだ。

大量のデータが使われたために、このアニメーションのたった1秒を作成するのに7時間を要した。

この可視化では渦(高さ数百メートルの割れ目と水面下の波に南極の大陸棚沖2キロで急落する低温高密度水の滝)によって生成される海面下の嵐を明らかにした。

「この可視化を見た科学者たちは、その詳細レベルに驚いていました。」と准教授のAndy Hogg博士は語った。

「しかしこの可視化は国民に科学の不思議を伝える以上のものです。底層水の動きを単に数値でみるだけでなく、実際に3次元で見ることができるようなり、2次元の出力がすでに新しい科学的研究の領域を開いているか確認できるようになったのです。」

この最新のアニメーションは、どのように南極の大陸棚上で生成された低温高密度水が世界のすべての海の流域に広がるかについて探るために、海洋の表面層の多くをはぎとっている。

この高密度水の動きは非常に重要だ。それは海の中で最も酸素を含んだ水であり、その非常に高密度で低温であることが、南方洋につながる主要な海洋沿岸における多くの重要な流れを作りだしているのだ。

南極回りを移動する海水の明確に異なる密度はまた気候変動に関しても重要なものとなる。最高密度水は海底に降下していく前に南極の表面近くで形成されるので、表面近くで発生する温暖化は深海に落ちて行くことができるのだ。

重要なことは、これが深海により熱と炭素を運ぶこととなり、そうでなければ大気中に戻ることになるのだ。

「南極の荒れ果てた気候とこの地域の海洋の一定期間における継続的観測の欠如が、このような可視化制作のために海洋モデルを使う重要性を増やしたのです。」とHogg博士は語った。

「観測が難しい場所で起きている事の理解を助け、なぜ南極底層水が少なくなり、塩分が減り暖かくなっているのかを説明してくれるかもしれません。これは気候変動における将来の重要な知見を我々に与えてくれるでしょう。」