LinuxがHPCのゴールポストを広げる
Meike Chabowski

「ハイパフォーマンス・コンピューティング」(HPC)という用語は、当初は高度なアプリケーションを効率的に、高い信頼性で、迅速に実行するための並列処理の利用を指していたことが知られている。この用語は特に、1テラフロップスもしくは毎秒10^12回の浮動小数点演算を超える機能を持つシステムに適用され、また頻繁にスーパーコンピューティングの同義語としても使われる。技術的には、スーパーコンピュータは計算機において現在の最高速の動作レート、もしくはその近傍で動作するシステムのことだ。システムの性能が増すにつれて、産業界は時と伴に、単一プロセッサからSMP、分散メモリクラスタ、そして最終的にマルチコアおよびメニーコアチップに移行してきたのだ。
しかし、ユーザとベンダーの数を増やすために、現在HPCはコア、サイクルやFLOPSを言わず、発見、効率性、もしくは市場までに時間を取り上げている。数年前にIDCはHPCの解釈を「高生産性コンピューティング(ハイプロダクティビィティ・コンピューティング)」とし、HPCがもっと効率的でスケーラブルな生産性を顧客に提供する考えを強調しており、この用語はほとんどの商業的顧客にとって本当に良くあっているのだ。
しかし、どのように我々はここに来たのだろうか?
速いペースの技術革新
数年前、UNIXの派生であるAIX、HP-UX、Tru64 UNIX、Solaris等が支配していた – そして、独立したコモディティ・クラスタのマシンをクラスタリングしてスーパーコンピュータを構築することは15年ほど前には論争の的となる考えであった。歴史的なHPCのコストが、それを望む市場セグメントへの利用を制限したのだ。しかし、より低コストなハードウェアとLinuxの両方の進化が劇的にこれらのシステムのコストを減らす一方で、演算能力はたった数年間で1,000倍のスケールで増加したのだった。この組み合わせで多くの企業が、コモディティ・ハードウェアによるHPC Linuxクラスタ形式のスーパーコンピュータの力を利用できるようになった。
時は金なり
以前と比べると、もっと多くのビジネスが現在コンピュータを使って単にビジネスを管理するだけでなく、納品(アニメーション、株式交換、アナリスト、金融、天気予報)の一部であったり、または商品(石油研究、車衝突試験、薬物研究)を作る支援のために利用している。速く成し遂げることで、市場投入までの時間をスピードアップし、より正確に作る事でもっとバッファをもつ事ができるのだ。このように、HPCシステム上でできることをできるだけ速くすることは競争的優位性となるのだ。クラスタをアップグレードする例を挙げると、あるチームが最近新しいHPCシステムをヘルスケアのクライアントのために構築した。この新クラスタは以前のものより10倍高速で、半分の価格で、そしてサイズは四分の一だった。
ビッグデータか? HPCか?
もうひとつの重要なカテゴリは「超大規模ビジネス・コンピューティング」だ。データ集約型のタスクを持つ商業企業はHPCを採用している。例えば、Google、Amazon、Facebook、もしくはeBayのような企業を見てみよう。これらの企業のほとんどは従来のHPCのワークロードを持っていないが、1日の終わりには、これらの企業は、「ビッグデータ」の処理のためにすべてのデータを取り扱い、エクトスリームなスケールでそれを実行するためにHPC技術を利用している。
橋をかける
また、ビジネスのニーズの変化と経済的ソリューションの有効性によって、HPCを採用する中堅企業が増えている。スーパーコンピューティング分野における多くの組織が、中小企業の業界への架け橋を築き、スーパーコンピュータへのアクセスばかりでなく、彼らのハイパフォーマンス・コンピューティングにおける専門知識を提供しており、そしてピッツバーグ・スーパーコンピュータ・センター、やアイルランド・ハイエンド・コンピューティング・センターの2つの例のように、産業界と官公庁大学間の協調も継続的に増えている。
Linuxはお友達
HPCのビジネス・ワークロードのために長い間UNIXユーザである企業は、Linuxに完全に頼ることができることを理解する必要があり、LinuxはUNIXと同等になっており、可用性、スケーラビリティおよびパフォーマンスに関する多くの部分においてUNIXを凌いでいる。
Windowsだけがオプションではない
Windowsを使っているビジネスは代替をチェックするために「勇気を持つ」必要がある。おそらくデュアルブートHPCシステムが最初のステップかもしれない。LinuxおよびWindowsが企業における将来の2つの支配的なプラットフォームになりそうであり、一緒にうまく動作するように管理するためのオペレーティングシステムやツール類の必要性が増している。よく発達した相互運用性の機能が不足しているシステムは、企業全体の非効率性を引き起こす可能性がある。
例えば、LinuxおよびWindows環境間の制限された相互運用性は、物理および仮想インスタンスの両方において、サーバの無計画な広がりにつながりかねない。また、冗長な管理ツールやITスタッフの非効率な活用にもつながる。これは同様にHPCにも言える。HPC市場において使われる2つの主要なプラットフォームがLinux(主に)とWindowsであることは論理的だろう。そして、この2つはまたこの分野で良く相互運用する必要があるのだ。
Linuxが非常に多くの場合、技術革新の「先頭にたって」いるように、技術的な革新と改良をスピーディーに採用するおかげで、Linuxは新しいHPC市場のダイナミクスにおいて重要な役割をさらに演じることとなるだろう、そこではHPCはさらにもっと「高生産性コンピューティング(ハイプロダクティビィティ・コンピューティング)」に向いていくのだ。HPCクラスタに向かう非HPC環境においては、スピードの改善はノード数の範囲のどこかとなる。なので、単一のワークステーションから200ノードのクラスタ(約5ラック分)の場合、以前と比べておおよそ200倍の性能を得る事となる。
技術は進化し続けているように、スーパーコンピューティングはより多くの業界で高生産性コンピューティングの中で継続的に不可欠な技術となってきている。実際に米国エネルギー省は現在、将来の時代にHPCを採用する業界のために、エクサスケール(継続的性能で1,000ペタフロップス)を提供する究極のスーパーコンピュータの開発に取り組んでいる。オープンソースとLinuxが進化し続けるように、高生産性コンピューティングは、ほとんどのデータ駆動型業界において成功への鍵となるだろう。
著者について
Meike Chabowskiは、SUSEでのEnterprise Linuxのサーバのプロダクトマーケティングマネージャである。