世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


1月 17, 2014

Sequioaからゴードン・ベル賞が輩出

HPCwire Japan

Nicole Hemsoth

毎年SCにおいて、ACMは、最も人気がある賞のひとつであるゴードンベル賞を授与する。SCの定例的な特色になったこの賞は、1987年から現在に至り、並列計算の先覚者であるGordon Bellが後援して1万ドルの賞を授与する。この賞を受けるためには、現実世界のアプリケーションあるいはその他のデモンストレーションで高い性能を示すか、科学的アプリケーションその他HPCを促進する技巧について、問題を解くためのスケーリングあるいは時間を驚くほど進歩させる必要がある。

2013年のゴードン・ベル賞は、ETH チューリッヒのDiego Rossinelli氏、Babak Hejazialhosseini氏、Panagiotis Hadjidoukas氏、Petros Koumoutsakos氏、IBMチューリッヒ研究所の Steffen Schmidt氏、 ミュンヘン工科大学のNikolaus Adams氏による、「雲空洞崩壊の11 PFLOPSシミュレーション(11 PFLOP/s Simulations of Cloud Cavitation Collapse)」に対して、高性能アプリケーションのデモンストレーションにより、授与された。

(訳注:cavitationとは液体中に気泡が発生する現象である。)

彼らは、ミュンヘン工科大学およびLLNLと協力し、計算流体力学における記録を破った。IBM Sequoiaシステム上において、640万のスレッドを動かしたのである。このシミュレーションは、IBMによると、「今までで最大の流体力学シミュレーションであり、Sequioa上で13兆のセルを使い、流体シミュレーションに前例がない14.4 PFLOPSを達成しました。これは理論的なピーク性能の73%です。」

泡破裂実験を活動中に見るのは本当に面白い。これらのシミュレーションは、圧壊泡の雲に関連する複雑な現象をモデル化し、製造業、医療、「Shatter」腫瘍、腎結石、燃料噴射相互作用の理解に役立つ。

研究者らは受賞した力作を解説した。「内燃機関、油圧タービンのようなエネルギーにクリティカルな機械だけでなく浄水器や腎臓にまで、空洞の破壊力が寿命を縮めます。」さらに、一般的な流れの複雑さは2次のオーダーで増加するが、「現在最高水準の技術によって1次のオーダーにできました。ソフトウェアは、現代のスーパーコンピューターが持つ限られた記憶バンド幅、I/Oバンド幅、記憶領域に対する挑戦に、うまく対応できました。」

IBMチューリッヒ研究所の数学と計算機科学の主任であるAlessandro Curioni氏によると、「我々がこれを達成できたのは、IBM BlueGene Qプラットフォームにある、ポインター配列のハードウェアとソフトウェア機能によります。これによって、とてもよくスケーリングするコードを短い期間で開発できました。さらに、過去の最高水準よりもオーダーについてよい結果を得られました。Top500リストは国際的な関心を持ち続けていますが、私たちのアプリケーションと計算機は、世界的な人間とビジネスの関心事へのスーパーコンピューターの応用をいくらか定量化できました。」

IBMが指摘するように、過去の流体シミュレーションよりも1桁から2桁速い。最後の大きな賞は、2013年前半に、Sequoia上で100万コアの限界を突破した、スタンフォード大学のチームに与えられた

2013年に、この賞の委員会は、受賞のために何が必要化の説明をはっきりさせた。

受賞者は、単に性能の数値そのままでは選ばれない。むしろ、次のようなことが重要である。

  • 重要なアルゴリズムの実証と進歩の実装
  • 過去の画期的な業績を明らかに超える成果
  • ひとつのアーキテクチュアに依存しない解法 (狭い問題領域のためのシステムや他のことに使えないシステムではない)
  • 強いあるいは弱いスケーラビリティ、問題を解くための時間、メモリーの要領とバンド幅、通信とI/Oのバンド幅、ピーク性能のようなボトルネック・リソースに対する効率の測定
  • 他の人々が学べ、進歩から利益を受けられるような一般的な成果

重要な科学的あるいは工学的問題を解決することは、成果を正当化するために重要であるが、科学的な成果だけではこの賞に値しない。