世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 12, 2014

次世代エクサスケールに関する調査研究報告会開催される

HPCwire Japan

最近の報道で日本は2020年を目指してエクサスケール・システムの開発を行うと発表されたが、はたしてどのようなシステムになるのだろうか?

今週月曜日3月10日、秋葉原において「将来のHPCIシステムに関する調査研究」最終報告会が開催された。会場は満席で多くの関係者の関心の高さを示した。この調査研究は文部科学省の委託研究として、次の世代、特にエクサスケールシステムを開発するための予備調査として位置づけられている。

開催にあたり、文部科学省計算科学技術推進室長の川口悦生氏は、「今後の5年から10年を見据えてHPCIシステムをどのように進めるかについて調査研究を実施してきた。本プロジェクトは理研を中心としたアプリ分野、東京大学、筑波大学、東北大学をそれぞれ中心としたシステム設計の3つを合わせた合計4つの調査研究によって、特徴あるシステムの調査研究を行ってきた。これが最終報告会となる。日本も世界に先駆けて2020年のエクサスケールシステムの開発にむけて進めていく計画である。これは産業界の技術革新にも寄与するものでもあり、文科省としてはスーパーコンピュータの研究開発を戦略的にすすめて行きたい。」と挨拶した。

その後は各プロジェクトの代表者による報告が行われ、理化学研究所を中心とする「アプリケーション分野からみた将来のHPCIシステムのあり方の調査研究」の報告では代表の冨田浩文氏が講演し、今後5から10年にわたる社会的、科学的貢献課題の抽出とシステム設計チームが提案する計算機システムの評価がミッションであり、せいの成果は「計算科学ロードマップ(中間報告)」として発表されている。またシステム評価のためのミニアプリ集「FiBER Mini-App Suite」を開発しており、システムの評価方法を含めて研究を進めていると説明した。

東北大学が中心となるシステム設計チームのひとつである「高メモリバンド幅アプリケーションに適した将来のHPCIシステムのあり方に関する調査研究」報告では小林広明教授がピーク性能ばかりに目が向いたシステム開発でなく、実際のアプリケーションが必要とするシステム設計を考え、主に1回の演算当りのデータ供給量を高くするシステム設計について説明を行った。

筑波大学 佐藤三久教授は「演算加速機構を持つ将来のHPCIシステムのあり方に関する調査研究」報告として、アクセラレータを使ったエクサスケールシステムであるPACS-Gアークテク茶の設計について講演を行い、ハードウェア的にエクサスケールは実現可能であるが、一番難しいのはシステムソフトウェアやプログラミング環境の開発であることを強調した。

最後に東京大学の石川裕教授の代打として平木敬教授が「レイテンシコアの高度化・高効率化によるHPCIシステムのあり方に関する調査研究」の報告を行った。東大のプロジェクトは東京大学、九州大学、富士通、日本電気、日立製作所の日本の大御所を揃えたプロジェクトである。各種のシステム・タイプをアプリケーション性能などを測定し検討した結果、Type-Dと呼ばれるMTBFは「京」相当、設置面積は「京」の6割程度で収まる方式が最善であると判断された。ただし、これが理研の次世代のエクサスケールとなるとは限らないと強調している。

セッションの最後ではパネル討論が行われ京都大学の中島浩教授がモデレータとなり、エクサスケールが可能かどうかをテーマに各プロジェクトの代表者を中心に会議の出席者も参加して活発な議論が行われた。