世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


3月 26, 2014

富士通、3,000原子のナノデバイスシミュレーションに成功

HPCwire Japan

Tiffany Trader

FUJITSU

富士通の研究部門はスーパーコンピュータの先端技術を使って、これまでの研究と比べて3倍となる3000原子のナノデバイスの電気特性をシミュレートすることに成功した。同社は、ナノスケール・レベルにおいては、原子配列の微妙な違いがデバイスの電気特性に大きな影響を持つ事ができると指摘している。課題は、正確に各原子の挙動を計算するための計算に第一原理法を必要とすることである。この方法は原子や電子を支配する量子力学の基本法則から物理的特性を決定する。

計算機シミュレーションは、物理的な実験よりも、より速く、より費用効果の高い開発プロセスを支援するものと考えられている。しかしこの場合、落とし穴があります。第一原理法は電気特性予測に適用する場合、関与する計算は非常に大きく、予測は一般的に炭素原子で1,000くらいに限定される。このスケールでは唯一のチャネル領域(電気の経路) のみ計算可能である。より望ましいシミュレーションは、大幅な電気的特性に影響を与えることが理解されている隣接する電極および絶縁体の何千もの相互作用を組み込む。今まで、これは扱いにくい問題と考えられてきた。

富士通研究所は、科学技術の北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)と計算物質科学イニシアティブ(CMSI)が開発した超並列スーパーコンピューティング技術をベースに新しい技術を思い付いた。新たな計算手法は、精度を維持しつつ、メモリ要件を低減する。このアプローチでは、個々のナノデバイスコンポーネントが、これらのコンポーネント間の相互作用だけでなく、電気的特性を算出することができる。この進歩は、3000の原子スケールのアプリケーションの成功を有効にしている。また研究者は、この開発がナノデバイスの高速な実用的な実装のための方法を作ることを期待している。

シリコンベースのデバイスは微細化の限界に来ており、速度およびエネルギー効率を高めることができる新素材および構造の種類を開発することへの関心の高まりがある。ナノテクノロジーは、ムーアの法則型リターンを維持する有望なパスを提供している。

「3,000原子のナノデバイスの電気特性をモデル化することが可能であり、環境との相互作用を含めたナノデバイスの電気特性を発見することに使われたこの技術は、新しいナノデバイスの設計に向けて重要なステップとなるだろう。」と公式発表で指摘している。

これまで以上に大規模な並列コンピューティング技術と、よりパフォーマンスの高いスーパーコンピュータが利用可能になると、富士通は大規模かつ効率的な計算を試していく。今後、富士通は10,000原子スケールでのナノデバイスの合計シミュレーションによりナノデバイスの設計を進めている。