IBMと東京エレクトロンが3次元チップの積層技術を発表
Oliver Peckham オリジナル記事

ムーアの法則の減速に対抗する戦いが続いている。「単位面積当たりのトランジスタ数」を「単位体積当たりのトランジスタ数」に変えるべく、各社がしのぎを削る3次元積層チップ。今回、IBMと日本の半導体企業である東京エレクトロンは、ガラス・ウェーハ・ベースが不要になり、プロセスが合理化された3Dチップ積層技術の新たなブレークスルーを発表している。
3次元積層チップを構成する積層シリコンウェーハは、製造時にキャリアウェーハに搭載さ れる。キャリアウエハーもシリコン製だが、シリコン製のキャリアウエハーとチップ用のシリコンウエハーを分離するのが難しく、また、分離の際に機械的な力がかかると、残りのウエハーに傷がついてしまう。そのため、キャリアウエハーは紫外線レーザーで除去するガラスウエハーが一般的だ。
しかし、IBMと東京エレクトロンは、現在の欠点を解消して3Dチップ製造用のシリコンキャリアウェハーを可能にする方法を発見した。この方法では、赤外線レーザーを使って、シリコンキャリアウエハーと他のシリコンウエハーとの接着を解除する。両社によると、これには多くの利点があり、まず第一に、生産工程でガラスが不要になること、さらに、互換性の問題、欠陥やプロセスの問題の低減、より薄いウェーハや他の新技術のテストが可能になる、としている。このプロセスは、新しい300mmモジュールを使って実証されたもので、両社は、300mmレベルでは初の3次元積層シリコンチップ・ウエハであると述べている。
20年以上のパートナーである両社は、ニューヨーク州アルバニー、特に半導体研究開発拠点であるアルバニー・ナノテク・コンプレックスにベータシステムを構築するなど、4年前からこのレーザーデボンディング技術に取り組んできた。今後は、さらにベータテストを重ね、実際の製造ラインに導入する予定だ。
IBMは、3Dチップ製造を成長分野と見ており、2029年まで2.5D/3Dチップパッケージングセグメントで10.1%の複合年間成長率が見込まれるとしている(Global Industry Analystsの報告書による)。実際、AMDやGraphcoreといった企業は、昨年から積層チップ技術に多額の投資を行っている。IBMは、3D積層チップ技術への投資が生産プロセスの合理化に役立ち、現在生産者と消費者を同様に悩ませている世界的なチップ不足に明るい兆しをもたらすことを期待している。
J.Gold Associatesの社長兼主席アナリストであるジャック・ゴールド氏は、「チップ積層技術は新しいものではなく、多くのチップメーカーが採用してきましたが、IBMと東京エレクトロンが開発したプロセスにより、積層チップの大規模生産がより効率的になり、その結果、より低い欠陥率で、より複雑な設計を実現できるようになるはずです」とコメントしている。「もちろん、これはまだプロトタイプの段階なので、ファブの生産ラインに完全に実装する必要があります。しかし、この技術が普及すれば、高性能の積層チップをより高性能にすることができ、また、フラットなモノリシックデザインではなく、ビルディングブロックとして互いに接続された、より創造的なデザインを可能にすることができます。」