CAEシリーズ:第3回 CAEとソフトウェア
今回はCAEとソフトウェアについてお話をさせて頂きます。CAEには多くのソフトウェアがありますので基本的な説明のみになります。
CAEソフトウェアの分類
CAEソフトウェアの分類は以下の様になります。この他にも沢山の分類があるかと思いますが、主要な分類と考えて下さい。 左側に書いてある連成解析、最適化、プリ/ポストは各CAEソフトウェアと連携、あるいは組合わせて使います。
連成解析は構造と流体、電磁場と熱等の複数の物理現象の相互影響を考えた解析。
最適化は目的関数を満足する最適なパラメータ決定を手助けします。
プリ/ポストは各解析でメッシュの作成、境界条件の設定を行います。
CAEソフトウェアの歴史
【CAEソフトウェアの誕生期:60年代~70年代】
CAEのソフトウェアは商用ソフトウェアとしては構造解析の草分けとしてNastranが有名で、アメリカ航空宇宙局(NASA)の為に1960年代の後半に作られました。そして1970年代初めからNastranの名称で販売されるようになったのが最初の商用構造解析ソフトウェアです。 その他の著名なソフトウェアでは非線形解析ソフトウェアのMARCがあり、これも1960年代の後半に源流があり、70年代に商用化されています。
流体解析も60年代から研究されており、最初の商用ソフトウェアとしてはPHOENICSが3次元汎用熱流体解析ソフトウェアとして70年代半ばに出ています。このように最初の商用のCAEソフトウェアは70年前後に世の中に出てきております。
【CAEソフトウェアの発展期:80年代~90年代】
80年代になると新しいソフトウェアである DYNA3D、ABAQUS等が出て多くのソフトウェアが出てきました。そして80年代後半からGraphicsを使ったモデル作成、結果の表示等ができるようになり、使い易い環境になりました。
80年代はスーパーコンピューターやVAXに代表されるミニコンがCAE用のコンピュータとして使われ、90年代になるとUNIXワークステーションの登場でCAEにおける計算環境がかなり良くなりました。 しかしソフトウェア、コンピュータともに高価であり、利用できるのは国立の研究所や大企業であり、研究開発に大きな投資が可能な組織で使うことができた時代でした。
この為に投資が難しい企業では70年代~80年代に大学の研究室と一緒になって自作の解析ソフトウェアで構造解析や電磁場解析を行っていた企業の方も多かったようです。 航空機の開発では70年代から流体解析ソフトウェアが自作されて使われておりました。
【CAEソフトウェアの普及期:2000年代~10年代】
90年代後半からは、それまでの汎用CAEソフトウェア以外に射出成形やプレス成形等の専用ソフトウェアが登場しました。また最適化や連成解析も可能になり、利用できるソフトウェアの種類が非常に多くなりました。 また粒子法のソフトウェアも出てきて、今まで難しかった撹拌や飛沫現象等の解析、粉体から連続体への挙動の解析ができるようになり利用する分野が広がりました。これによりCAEソフトウェアの利用は自動車産業、航空機産業、そして精密機器、産業機械等を中心にして利用する企業が増え、設計・開発では欠かせないツールになってきております。
80年代に自作していたユーザも2000年以降では開発・維持することが難しくなったのと、商用ソフトウェアが自作に比べて比較的低価格かつ高機能になったことにより、多くの方が商用ソフトウェアを使うようになりました。 ただ航空機の流体解析や商用ソフトウェアにない特殊な解析をする必要がある場合は、各社で自作ソフトウェアを使っています。
設計者向けCAEソフトウェア
上記に書いた歴史は主にCAEを専門とする研究者、技術者のソフトウェア環境の簡単な歴史を書かせていただきましたが、2000年代に入ってからは設計を主業務とする技術者も3次元CADに備わった簡易の構造解析、流体解析が可能な設計者向けのCAEソフトウェアを使うようになりました。解析機能は早く計算したいということもあり、基本的な解析機能が主体で、CADと一体になってモデル作成から結果表示までできるような環境になっております。今後は設計者向けのソフトウェアが普及すると思われますが、評価するスキルが大事になります。この辺についてはCAE技術者の教育のところで述べたいと思います。
次回は「CAE利用の流れ」という内容で書かせて頂ければと考えております。