CAEシリーズ:第8回 連成解析について
今回は連成解析についてお話をさせて頂きます。
CAEソフトウェアの機能を見ていて、連成解析に関しての記述を見たが何か判らないという方も多いのではないでしょうか? CAEは構造解析、流体解析、熱解析、磁場解析、振動解析等々、多くの個別の機能があります。そしてソフトウェアも各機能に特化した解析機能を持ったソフトウェアが開発されました。しかし世の中の工学的な現象は単一の事象が発生しているのではなく、構造と流体、そして熱等の複数の事象が同時に影響し合って現れます。 この複合した現象をまとめて解析しようというのが連成解析とご理解頂いて良いと考えます。
強連成と弱連性
連成解析で最初に判りづらい言葉がこの強連成と弱連成ではないかと思います。強連成は各現象の支配方程式を一つの統合された支配方程式でまとめて一括して解く方式です。この方式であれば複数の現象を統一的に解くことができるので、より精度の高い計算ができます。しかし欠点としては支配方程式を離散化した時に大規模な連立方程式になる為、計算機のメモリーが大量に必要である事、また計算時間もかかる事です。
一方、弱連成は複数の現象を別々に解き、計算する時間ステップごとに計算結果をその現象の境界面のデータとしてファイル渡し等で他の解析ソフトウェアに渡して計算する手法です。この方法は強連成の様に莫大な計算資源は必要としませんが、計算精度に関しては強連成には及びません。
強連成ソフトウェアとして代表的な製品
COSMOL | ———- | COMSOL, Inc. (スウェーデン) |
マルチフィジックス解析を前提として設計されている有限要素法(FEM)ベースの汎用物理シミュレーションソフトウェア。開発の当初が一般偏微分方程式をベースに各種の物理現象の解析機能を取り入れたソフトウェアなので強連成解析はスムーズに対応ができるようになっています。 伝熱・流体・構造・電磁場・音響・物質輸送・移動メッシュのような物理現象全般に対しシミュレーションが実行可能です。 |
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ANSYS Multiphysics | ———- |
アンシス・ジャパン株式会社 |
構造、振動、伝熱、電磁場、圧電、音響、熱流体など、非常に幅広い物理現象を解析可能。また様々な解析機能を組み合わせて連成解析を行なうことで、より実現象に近い、詳細な解析を行なうことができます。 資料を見ると連成解析機能には、片方向・双方向のシーケンシャル連成やマトリクス連成の各種手法があり、強連成に相当するのは「マトリクス連成」になります。具体的に、どのタイプの連成解析に対応しているかは販売会社に確認する必要があります。 |
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弱連成解析 | ||
各種の解析ソフトウェアが構造-流体解析等の連成解析に対応しております。どのような連成解析が可能かは、各ソフトウェアベンダーに確認する必要があります。上記のAnsysに関しては「シーケンシャル連成」が弱連成に相当します。 また弱連成解析をサポートするソフトウェアとしてMpCCIがあります。 MpCCIは、独scapos AG社によって開発されたマルチフィジックス連成解析インターフェースで、異なるCAEソフトウェアを連成させるための要素技術が詰まったツール群として提供されております。 |
上記以外にも連成解析機能を持った多くのソフトウェアがあるかと思います。そちらに関しては各ソフトウェアをご参照ください。
ソフトウェアの選択に関しては自社の業務に適した解析ができるように十分検討をされてから採用する事をお勧めいたします。
次回は「最適化ソフトウェア」という内容で書かせて頂ければと考えております。