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5月 18, 2015

CAEシリーズ:第7回 CAEにおける粒子法関連ソフトウェア

岩田進吉(有限会社イワタシステムサポート代表取締役/中部CAE懇話会幹事)

今回は粒子法関連のソフトウェアについてお話をさせて頂きます。

粒子法は、連続体を有限個の粒子によって表現し、流体の流れや連続体に発生する変形や応力を粒子の挙動によって計算する方法です。連続体の挙動は微分方程式によって表現され、有限要素法や差分法と同じように粒子法でも同じ考えのもとに、連続体の挙動を解析しております。連続体を離散化した表現として有限要素法では要素(メッシュ)、差分法では格子で表現しておりますが、粒子法では粒子で離散化した結果を表現しております。

連続体の挙動記述するのは連続体の移動とともに観測点が移動するラグランジュ法と観測点が固定のオイラー法がありますが、直感でわかるように粒子法は観測点が移動するラグランジュ法での記述になります。

粒子法には古くからLS-Dynaでのスロッシング解析等で使われているSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法と東大の越塚先生が開発したMPS(Moving Particle Semin-implicit)法があります。

粒子法の利点としては

  • メッシュ生成の必要がなく、形状に応じた粒子を生成するのは比較的容易である。
  • 粒子の生成も自動で行うことができ、生成時間も高速である。
  • メッシュのように変形によりメッシュ品質が悪くなる事がない。
  • 飛沫のような現象を表現する事ができる。
  • セラミックのように粉末が固まって連続体になる挙動も表現ができる。
  • 大変形を伴う解析では従来の解析手法に比べて、より大きな変形まで解析可能。

等のメリットがあり、今まで解析する事ができなかった新しい分野での利用等が期待されています。
利点ばかりでなく欠点もあります。主な欠点としては

  • 忠実に表現しようとすると粒子の大きさを小さくする必要があり、その場合の粒子数が膨大になう。
  • 粒子の径が一定であり、メッシュの様に境界層や詳細検討をしたい部分だけを細かくできない。その場合は細かい部分に合わせた粒子になり、粒子数が膨大になる。(特殊な方法で粒子径を変える事ができるが、かなり大変になる)

等があります。この計算時間がかかる問題に関してはGPGPUを利用して高速化等の努力がなされております。

主なソフトウェア

Particleworks  ――― プロメテック・ソフトウェア株式会社
粒子法MPSの開発者である東大の越塚先生が創立者のひとりになっている会社で2004年に創業。Particleworksを中心にして粒子法のソフトウェアの販売、コンサルティングを主な仕事にしています。
毎年ユーザ会を開催しているが、2014年のユーザ会は400名以上の参加者が品川の会場に集まり、盛大なユーザ会を開催しました。東京だけでなく、中部地区 でも開催しており2014年の中部地区のセミナー参加者は100名以上の参加者が集まる盛況で、製造業をはじめとした大企業のユーザの方々が講演をし貴重 な講演や意見を行いました。
解析事例は
http://www.prometech.co.jp/352992651220107203631996835239.html
に掲載しているので多くの事例を見る事ができます。
SPHinxシリーズ  ――― 株式会社SPH研究所
横浜国大の酒井先生の研究成果を製品としたもので SPHinxシリーズには構造、流体、粉体の3種類のソフトウェアシリーズがあります。酒井先生は SPH法をベースに粉体の解析を主に研究をされてきて、粉体が固まって連続体に成形される解析等では多くの解析事例を持っております。
解析事例は
http://www.sphlab.co.jp/index.php?Application_Examples
に掲載しているので多くの事例を見る事ができます。
RFLOW  ――― 株式会社 アールフロー
1996年に創立した粒子法では老舗企業。撹拌解析や樹脂の原材料の拡販の挙動解析の実績が多い。解析実績としては

  • 攪拌槽内熱流動解析
  • ポンプ内流動解析
  • 気泡塔内気液二相流解析
  • サイクロン内気固二相流解析
  • シールド機内固液二相流解析
  • ばっ気沈殿型リアクター内気固液三相流解析
  • 単軸/2軸押出し成形機内熱流動解析
  • 塗布流動解析
  • DEMによる流動槽内粒粉体解析
  • スロッシング解析

等の多数の実績があるとの事です。
事例は
http://www.rflow.co.jp/rflow.html
に掲載しているので具体的な利用例を参照可能です。

上記以外にも粒子法関係では多くのソフトウェアがあり、特にSPH法を取り入れたソフトウェアは数多く出されているようです。そちらに関しては各ソフトウェアをご参照ください。
ソフトウェアの選択に関しては自社の業務に適した解析ができるように十分検討をされてから採用する事をお勧めいたします。

次回は「連成解析ソフトウェア」という内容で書かせて頂ければと考えております。

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