PGS、ヒューストンのメガセンターに2台目のクレイを導入
Tiffany Trader

「我々はより大きなスーパーコンピュータを必要としているのです。」これはノルウェーの石油ガス企業であるPetroleum Geo-Services (PGS)社がその地震データ処理能力を50%拡張するために象徴的なスーパーコンピュータメーカーと協力する前にクレイ社に言って置かなければならないことだった。
PGS社がスーパーコンピュータを持っていなかった訳ではない。海洋探査に特化したこのエネルギー巨大企業は昨年4ペタフロップス(ピーク性能5.3ペタフロップス)のCray XC30システムを導入しており、当時の記録としては民間で最大のスーパーコンピュータであった。(そのタイトルはその後、今年初めにSGI社の5.3 ペタフロップス(ピーク性能6.7ペタフロップス)の”Pangea”スーパーコンピュータを購入したもうひとつの業界のヘビー級であるTotal社に奪われている。
発表によると、PGS社の2番目のCray XCシリーズは、12台の液冷キャビネットに収められて2.8ペタフロップスの演算性能を持っており、PGSの総合計スーパーコンピューティング能力を約8ペタフロップスにしている。この2番めの独立型システムは既存の24キャビネットのマシンと同じヒューストンのデータセンターに設置される予定だ。この追加でまた既存のSonexionのストレージも2.8ペタバイトまで拡張される。
フランスの数学者であるÉvariste Galoisから”Galois”と名付けられたこの新XC40システムは、同じようにノルウェーの数学者であるNiels Henrik Abelにちなんで”Abel”と名付けられた、より巨大なクレイと同様にIntel Xeonプロセッサのみで動作している。両システムとも、高度なリバースタイムマイグレーション(RTM)画像と全波形インバージョン(FWI)の結果に対する顧客の要求を満たすための大規模な地震データセット処理に使われる。クレイ社はXeon PhiメニーコアやGPUベースのシステムを販売しているが、クレイ社の上級副社長で最高戦略責任者であるBarry Boldingは、PGS社の場合にはIntelの汎用x86プロセッサが理想的であると指摘している。
PGS社はGaloisをTOP500に入れるかどうかについては述べていないが、現在その兄弟機であるAbelは最新のリスト(2016年6月)で16位に位置しており、LINPACKは4ペタフロップスだ。その1年前にリストに入った際には12位だった。参考として、Total社のSGI ICE Xスーパーコンピュータは現在11位である。
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PGS “Abel” Cray XC30 |
PGS社は2013年11月にトリトン調査を開始した際に既存のクラスタ・ベースの計算能力で壁にぶつかった。精巧な地震波イメージング調査は特にイメージ化には困難であると知られているメキシコ湾の10,000平方キロメートルの領域に渡って行われた。この調査はPGS社がこれまでに直面した最も複雑なイメージングへの挑戦であり、高スループットなメモリ、強力なインターコネクト、および強化されたスケーラビリティを持つスーパーコンピューティング・クラスのインフラの必要性が生じたのだ。事業の目標は開発時間を短縮し、増加するワークフローの複雑性と量を生産において維持することであった。
地球の地殻の下に何があるのかを解き明かすために全波形インバージョン解析を用いることは、ネットワークとストレージの両方で高帯域幅を必要とする大規模でスケーラブルなスーパーコンピューティングの問題である、とBoldingは述べている。「これは大規模なシミュレーションなのです。」と付け加えている。「この計算機は数千万の小規模なジョブを流すのではなく、数百の大規模なジョブを実行するのです。」
最初のクレイ導入でPGS社は、生産期限までにトリトン調査を処理できないことから始まり、より複雑なデータとアルゴリズムを使ってより多くの大規模なジョブを実行するとこまで行った。コードのスケーラビリティは強化され、より高品質な結果を伴いながらさらに高速にジョブを実行できるようになったのだ。
「最終的には、支出する金額当たりにおいて、より価値のある、より多くの仕事ができるようななったことを意味しているのです。」とBoldingは述べている。「これは民間企業が行う方程式なのです。ピーク性能ではなく、TOP500に載ることでもなく、プロセッサのピーク仕様でもなく、いくつのジョブを実行できるかなのです。」
「これが気象コミュニティでも同じです。彼らは1日に非常に多くの予報を行うことができるので私共のシステムを購入し、そしてより効率的に行うことができるようになるのです。そこにはお金ではなく時間の制約があるのです。気象予報業界においては、彼らの時間軸内でこれらの予報を行えるようになるためには、喜んでさらにお金を払うでしょう。しかし、エネルギー業界においては仕事量当たりのお金なのです。」
「この新スーパーコンピュータはPGS社が同時にリードタイムを短縮し、より高品質な結果を伴いつつ、より大規模なジョブ、イメージやより複雑なデータを実行できるようにしています。」と声明の中でPGS社は述べている。「私共の顧客は、他の競合に比べてプロジェクト期間を短縮しながら、PGSリバースタイムマイグレーション、分離型波動場イメージング(SWIM)、および波動方程式反射性インバージョンのような最先端のイメージング・アルゴリズムのメリットを享受できるのです。」