世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


11月 15, 2013

Cray Cascades、GPUとコプロセッサの先端を纏う

HPCwire Japan

Nicole Hemsoth

2006年に遡り、Crayは、複数の処理技術を統合することができる単一のスーパーコンピュータアーキテクチャを創造することを目的としたAdaptive Supercomputing(適応型スーパーコンピューティング)と呼ばれる新たな戦略を発表した。X30(別名「Cascade」)のストーリーが示す当然の成り行きとして、HPC業界での逆境が彼らがその路線を見誤る事を許さなかった。

前向きにAdaptive Supercomputingビジョンを呼び起こし、同社はXC30スーパーコンピュータがXeon PhiコプロセッサとNVIDIA Tesla 20Xアクセラレータの両方のサポートを加えることで、その演算能力を強化したことを発表した。この時点までは、システムは、同社のAriesインターコネクトとDragonflyトポロジーで追い越し車線を提供され、Xeonベースのロードマップに安定的に留まっていたが、システムの選択肢のひとつとしてCrayは常にアクセラレータとコプロセッサの追加のために準備しているともてはやされていた。

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Xeon E5をスプリングボードから外すことが出来ることに加えて、X30は、Cascadeに標準的なCPUを超える推進力を与える構成変更可能なドーターカードの一対からなるブレードへプロセッサエンジン技術を結合することにより、キャビネットあたり99 Teraflopsを提供する。X30のアップグレードをしようとする人のために、その場所からブレードを持ち出すことなく、置き換えまたは再構成することが可能である。

これは、スイス国立スーパーコンピューティングセンターのPiz DaintスーパーコンピュータがGPUによって加速度的性能向上を得たことを3月に発表した後のまったく予想外の進展ではなかった(XC30を掲げるその種類において初)。スイス連邦工科大学チューリッヒ校の教授でスイス国立スーパーコンピューティングセンターのディレクター、Thomas Schulthessによると、そのアップグレードはすでに性能と効率の面で実を結び始めているという。

「気候と材料科学アプリケーションでの私たちの最初の経験が、NVIDIAのTesla GPUを搭載したXC30でマルチコアプロセッサの1台を交換することが、アプリケーションの性能を向上させ、不釣り合いな解決へのエネルギーを低減したことを示しました。」とSchulthessは言った。Piz Daint上の気候シミュレーションを用いた最近のテストでは、今では3倍以上速く実行され、CSCSの現在の主力システム「Monte Rosa」に比べ7倍以上少ないエネルギー消費で解決へ到達する。さらに、CSCSによると「Piz Daintで以前利用できた独占的なCPUプロセッサと比較しても、GPUプロセッサを搭載したハイブリッドシステムは、CPUだけのものよりもほぼ3倍以上のエネルギー効率で運用することができると期待されている。」と言う。

アップグレードおよびその後の性能をふまえたセンターの経験に関する詳細は、Schulthessが以下のビデオで詳細に説明する。

「私たちは、多岐に渡る専門分野の多くのコンピューティングの課題を解決するための強力かつ柔軟なツールを顧客に提供するAdaptive Supercomputingビジョンを実現するためにCray XC30スーパーコンピュータを設計しました。」とCrayのハイパフォーマンスコンピューティングシステム担当上級副社長、Peg Williamsは語った。「私たちのXC30システムに多様なアクセラレータとコプロセッサ技術を統合することにより、顧客が求める計算需要のための様々なオプションを提供することが出来ます。同様に重要なこととして、Cray XC30スーパーコンピュータは、顧客のユニークなアプリケーションのために様々な処理オプションの利用を最適化することができる革新的なソフトウェア環境も備えています。」

「単一のプロセッサエンジンがどんな種類のユーザアプリケーションに理想的でないことを理解し、Cray XC30シリーズは、ひとつの「適応性」HPC環境内でそれぞれの技術の強みを活用することのできるハイブリッドシステムを構築するため、スカラー処理、コプロセッシングおよびアクセラレータの柔軟性を強調しています。」また同社は「コプロセッサやアクセラレータ等のメニーコアの強みにx86マルチコアの利点を併せると、特定の機能のために最高の処理エンジンのタイプを対象とする必要性に対応できます。」と言及する。

興味深いことに、CrayのAdaptive Supercomputingビジョンが発表された時、AMDプロセッサが優勢に市場を推し進めていた「Rainier」時代の始まりにあった。Crayは、シングルプロセッサのベンダーと処理パラダイムを越えて手を拡げ続けてきたように、その初期の適応性コンセプトに向けた7年間の旅は、確かに曲がり角を抜けて商業と科学的コンピューティング環境の両方で新たな参入を提供している。彼らのGeminiインターコネクトからAriesを経由して先行は、ハイブリッドシステムに向けたドアを開けた。そして、今年11月のリストの最上段にいるスーパーコンピュータの新進気鋭な新たな顔ぶれにどのような影響を及ぼすか人は不思議に思わなくてはならない。