デザイン&シミュレーション倶楽部【データ・フローで考える(2)-”設計のJIT”をめざす】
【データ・フローで考える(1)-データは生もの】では、データにも鮮度があるという話をしました。このことを製造工程とのアナロジーで考えて見るともっとわかりやすいのです。
Just In Time (JIT)は、製造プロセスの中で部品在庫を持たず、タイムリーに部品を供給できるしくみで、製造工程のコストを下げ工程を効率化する手法です。製造工程において、在庫は、コストの直接要因ですし、どこかにダブつくということは、工程にボトルネックがあるということですから、在庫は悪の象徴です。
翻って、設計において、データを”溜める”ことはさほど気にされていないように見えます。部品のアナロジーで考えれば、溜まっているだけで、使われていないデータは、まさに在庫に他なりません。このことはもっと、設計プロセスの中で着目されていいことではないでしょうか?生成されたデータを、誰がいつ使うかを、しっかりと定義し、生成されたら瞬時に使う状態にしておくことです。このしくみを、ITの世界では、実はPLM (Product Lifecycle Management)というシステムとして提供しているわけですけれど、製造工程のJITという視点で比べると、その活用はずいぶんと遅れているように思われます。
設計プロセスのまっただ中に流通するデータは、すべて設計情報そのものであって、工程の中で、読み込まれ・加工され・修正され・書かれ・解釈され・判断されている、流通物そのものでなのです。言い換えれば、留まっていてはいけないものです。ということでので、製造を設計に、部品をデータに置き換えれて、JITを書き直してみましょう。
「”設計データ”をタイムリーに供給することで、”設計”工程での”設計データ”在庫を可能な限り少なくする」
さらに強力に、”設計のJIT”を実現するには、どうすればいいのでしょう。もう、答えは見えていますね。データ授受の自動化を行うだけで、データの滞留を一掃させることができる、ということです。設計工程でのJITを実現するには、データの授受を自動化し、仕事がデータを待つのではなく、データの方が仕事の開始を待つ状態にしておけばいいのです。”仕事の開始を待つ状態”とは、必要なデータか何でどこから来るのかが確実に定義されていということなので、これまで話をしてきた、データとプロセス両方の視点での標準化と自動化がその答えということになります。【シミュレーションの世界で情報爆発は起きている?(4)-属性で紐付け】ともつながってきます。
「データの滞留」は悪、鮮度のいいデータを素早く使う、ということを意識し、これを解消する方法を持てば、設計工程の劇的な改善につながり、大きな価値転換になるということが、もっと着目されてもいいですね。
*本記事は、Facebookページ「デザイン&シミュレーション倶楽部」と提携して転載されております。