世界のスーパーコンピュータとそれを動かす人々


10月 5, 2015

CAEシリーズ:第10回 OpenCAEの代表的ツールと関連情報 (その1)

岩田進吉(有限会社イワタシステムサポート代表取締役/中部CAE懇話会幹事)

今回はOpenCAEに関して、その代表的なソフトウェアと関連する情報についてお話をさせて頂きます。CAEにおけるOpenCAEは流体のOpenFOAMの知名度が上がった2010年頃から急速に広まりました。

関連するOpenCAE学会も2009年11月に発足しております。

なおOpenCAEに関しては内容も多いので2回に分けて記事を書かせていただきます。

OpenCAEとは

CAEに関して利用する上でのライセンスの面から考えると幾つかの分類があります。

CAEソフトウェアのライセンス面からの分類としては

① 商用CAE
販売を目的として、専門企業によって汎用の課題を開発するために開発されたソフトウェア、ライセンス契約をして有料で配布。北米、欧州を中心に多くのソフトウェアが開発・販売されております。
② OpenCAE
配布を前提にして、大学、研究機関、企業そして個人等により汎用の課題を解決するために作られたソフトウェア。非限定的なライセンスで利用か可能。欧州でのソフトが多いが日本でも大学発のソフトが幾つかります。
③ 自作CAE
開発者や所属組織内で限定的に利用されるソフトウェア。大学、研究機関での開発が多い。企業でも流体を中心に作られたが現在は少ない状況。

があります。 コストや利用の容易さ、精度等に関してはそれぞれ特徴がありますので、柴田先生(岐阜高専)の「Salome-Mecaで始める構造解析」等の文献を参考に検討して下さい。

注意点としてはOpenCAEに関してはサポートがないので習得に時間がかかる事が挙げられます。この為、CAEとソフトウェアに関してかなりの知識と興味があり、時間的にも余裕がある個人、あるいは企業でないと導入も難しいソフトウェアです。 この難しさを解消するのが関連するテキスト、インターネット資料、勉強会です。一番重要なのはしっかりサポートしてくれるコンサルタントとの関係かと思います。

このコンサルタントに関しても大手企業のコンサルタントのサポート、あるいはツールを使う場合は費用的にも高くなるので、多くの情報を入手して慎重に決定する必要があります。

まずは各地で開催されている勉強会に参加して講師の方と親しくなり情報入手する事が重要です。関連する情報としては

が参考になるかと思います。

他にOpenCAEを利用する上での特徴としてあげられるのが、ソフトウェアが利用できる環境になります。現在は多くの技術者がWindows環境で仕事をしているかと思いますが、OpenCAE(特にソルバー部分)の稼働する環境はLinuxが標準的です。この為にLinuxに親しまれていない方には少々ハードルが高いようです。

以下に、OpenCAEに関して

  • モデル作成、
  • メッシュ生成、
  • ソルバー、
  • ポスト処理、
  • 全体をまとめたALL-IN-1システム
  • 物理モデリングソフトウェア

に関して説明をさせて頂きます。

主なモデル作成ツール

モデル作成ツールとしては、主なツールとしてSalome、FreeCAD、Blenderの3つのツールを上げさせて頂きます。

1. Salome
Salomeはプリ処理、ポスト処理を備えた汎用ツールです。ホームページは

http://www.salome-platform.org/

でDownloadは

http://www.salome-platform.org/downloads/current-version

から可能です。簡単なモデルはSalomeのGUI上で可能で、Mesh作成も行うことができます。
最新のVersionは7.6.0でサポートOSはLinuxでは

Debian、CentOS、Fedora、Mageia、Ubuntu

Windowsでは32ビット、64ビットをサポートしたKitをDownload可能になっております。Downloadするにはユーザ登録をしてからDownloadが可能になります。
またメニューは1年ほど前まで英語とフランス語だけでしたが、関西CAE懇話会の有志により、開発元に働きかけ、日本語でのメニュー表示も可能になりました。

2. FreeCAD
モデル作成のツールです。ホームページは

http://www.freecadweb.org/

でDownloadは

http://www.freecadweb.org/wiki/?title=Download

からできます。サポートOSはWindows、Ubuntu 、MacOSをサポートしており、基本的には64ビット対応ですが、WindowsとUbuntuでは32ビットも対応しております。
モデルを作成するだけであれば非常に良いツールではないかと思います。

3. Blender
CGの世界で使われるソフトウェアでモデル作成にも流用が可能。機能が高いためにCAEのモデル作成の為だけに使うのは少々難しいかと思います。ホームページは

http://blender.jp/

でこのサイトからDownload等の各情報へアクセス可能。

4. REVOCAP_PrePost
FrontISTR、FrontFlowと同じプロジェクトで開発されたPrePostのソフトウェア。
ホームページはhttp://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/project/rss/software/06_info.htmlを参照下さい。
一度、勉強会で使わせていただきましたが、処理中に落ちてしまうことがあり、Freeといっても問題があると実感しました。エラーを吐くだけであれば良いのですが、落ちてしまうのは使い物にならないですね。是非、改善して欲しいものです。

 

主なMesh作成ツール

Mesh作成用のツールとしては、主なツールとしてNetGen、Gmsh、Salomeの3つのツールを上げさせて頂きます。私自身は個別に評価したことがないのでホームページ等のコメントを流用しております。

1. NetGen
3D立方体メッシュジェネレータ。Downloadのホームページは

http://sourceforge.net/projects/netgen-mesher/

にあります。もっとも古いツールで広く知られたツールです。

2. Gmsh
メッシュ単独のオープンソフトウェアとして比較的有名なソフトウェア。サポートするOSはLinux、Windows、Macと多くのOSをサポートしている。
ホームページは

http://www.geuz.org/gmsh/

にあります。
開発はベルギーのChristophe Geuzaineさん とJean-Francois Remacleさんにより開発されたとの事です。

3. Salome
モデル作成ツールで説明済み。メッシュ作成も可能。
4. REVOCAP_PrePost
モデル作成ツールで説明済み。メッシュ作成も可能。

 

20151005-CAE

Salomeでのメッシュ生成での簡単な例

サンプルにあるピストンの
Mesh生成したところ

 

 

 

 

 

 

 

今号では OpenCAE に関しての前半を紹介させていただきました。次回は「OpenCAE の代表的 ツールと関連情報(その-2)」という内容で後半を書かせて頂ければと考えております。

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